文鳥

日本のいちばん長い日の文鳥のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.2
東宝創立35周年映画。この映画の製作時に誰もが当たらないと思っていたというには傑作すぎる内容であると再認識した。
冒頭、ポツダム宣言から始まり天皇が終戦を決める場面からのタイトルイン。ナレーションとともにかっこいい入り方。陸軍大臣やくの阿南(三船敏郎)率いる軍人たちとそれ以外の対立。日本が勝たねばならないと仲間が死んでいくのをみて教育されてきた軍人たちは天皇が戦争を辞めると言ってもなお戦争を続けようとする。日本を守りたいというのは皆同じなのに方法と立場が違うことからさまざまな衝突が起こっていく。
完成が遅れる終戦の証書案、軍人たちは天皇の玉音放送をどうにか止めようと内閣総理大臣の家を焼いたり、放送データのリールを奪ったり、上官を殺してしまったり、大臣も自決してしまったりと立て続けに嵐のように色々なことが起こっていく。
そんな中、無事に玉音放送は放送され終結していくのだが、内閣総理大臣(加山雄三)は内閣の総辞職を決める。もう我々の出番じゃないから、後は若い人に任せなきゃねという姿は現職の政治家全てに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい眼差しである。
日本国の葬式だから、と儀式的にさまざまなことが遂行されてゆく。テンポも良く、芝居も本も画もいい。傑作だなと思う。

まだこの頃の日本人は良心があったように思う。誰かの傷にきちんと心を痛めて、何かの責任をきちんと自分で取ることができる。その意味を知っている。申し訳が立たずに自決をする覚悟をもった人間が当たり前のようにいる。今の日本の政治家は死というものがどうしてか遠のいてしまって誰もが自分と自分の中のいい人たちだけが助かろうとする老人ばかりである。しかしそんな姿をみている自分たちすら、ではお前には自分の生活や魂を他者に捧げることのできる気概はあるのか、と問われるとそんな余白は残っておらず。もう日本は終わりなんだなと再確認に至る。
もうこの映画、放送ジャックして毎日テレビとかでかけたら何か変わったりするのかな。一回政治家みんな映画見ないかな。芸術に世界を変える力があるのかどうかを再考察する機会になった。
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