No.1984
2024.01.16視聴
ルコント−14(1994年作)10/30
「イヴォンヌは香りのような女」
これが、この映画のキャッチフレーズ。
イヴォンヌだけじゃない、この映画そのものが香りの様な映画だった。
ヴィクトール(イポリット・ジラルド)の回想から始まる。夢ような1958年、夏。
ヴィクトールはレマン湖畔に滞在していた。
そのホテルで彼は若く美しいイヴォンヌ(サンドラ・マジャーニ)と出会う。
彼女は50歳ほどのゲイの医師ルネ・マント(ジャン・ピエール・マリエル)と一緒だった。
この男は行動が異様で、計画性がなく、驚くような行動をとる。
二人の恋愛はあくまでも「静」であるのに対し、彼の闖入で、映画自体に「動」が加わる。そんな効果を狙ったような存在。彼にはレジスタンスの地下組織員という秘密の顔があるようだ。
ヴィクトールとイヴォンヌは愛し合うようになるが、なぜ愛し会うようになるのか説明するようなシーンはない。しかし、お互いに惹かれるとはそんなことかもしれない。そこはフランス映画。
そして二人は夢のような夏を過ごす。
ラブシーンが美しい。
彼はこの村を出て、アメリカで過ごそうと彼女を誘う。しかし彼女はこのままがいいという。
イヴォンヌを演じたサンドラ・マジャーニが美しい。香り立つような美しさだ。モデル出身ということだが、1950年代のファッションがどれもすごく似合っているし、そのヌードの美しさは驚くほど完璧だ。
その彼女が香りのような官能を振り撒くから、それだけで見応えがある。
「イヴォンヌの香りを堪能あれ!」
と監督が言っているような気がする。
決して演技は上手いとは言えない。表情も硬い。しかしそこがまた、まぼろしのようなイヴォンヌにビッタリだ。
彼女はこの後どんな映画に出ているのだろうと思い、調べてみたが、出演はこの映画一本だけ。その後の消息は全くわからない。全く記載がないのだ。
狐に摘まれたような話とは、まさにこのこと。
イヴォンヌはどこに行ったのだろう。
余韻が残る。