囚人13号

ヘカテの囚人13号のレビュー・感想・評価

ヘカテ(1982年製作の映画)
4.0
凄かったけどやっぱ家で観ちゃダメだと思った。シュミットはアケルマンと同じ「暗闇」という特権的な環境がオフスクリーンレベルで作品に干渉するタイプの作家かと。

しかし面白いのは異国のファム・ファタール譚をファスビンダーのリズムで語っていくマイペースさだと思う。このスピード感は耽美演出に強いのでほぼ100%裸体が出現するんだけど、今回はちょっとAVすぎる(笑)。もちろん猥雑さはないです。

ニューシネマ以降のヨーロッパ映画らしく時間経過も不透明さを強調しつつ処理されるし、過剰な劇伴や立ちバックなど全てが問答無用で耽美世界の内側へ収斂していくのはちょっと狡い気も。
ショット感性に極振りしてるので美術品や逆光といった直接的な視覚要素の質量で攻めてくるが、それに応じるレナード・ベルタ凄い。特にあの艶やかな夜光・影色は日本やハリウッドでは過剰になるので撮れない強度。

しかしこれが男女の映画として素晴らしい点は、何だかんだ冒頭とラストを対応させる純粋な映画演出であって、背中を大胆に露呈させた女が振り返ることで生じる視線劇の反復が誘惑から再会へ変容している慎ましさに尽きる気がする。
囚人13号

囚人13号