ベストセラーとなったリリー・フランキーの自伝的小説の映画化。
リリー役にオダギリジョー、母親役に樹木希林、そして配役のポイントとなっているのが、若き日の母親を演じる内田也哉子。
リリーの恋人役に松たか子、特別出演的なチョイ役で小泉今日子や宮﨑あおいという豪華な女優陣の中で、おそらくほぼ演技経験なしの内田が主役級を演じたが、樹木希林とは実の親子なのでよく似ていて違和感がないのはもちろん、意地悪な書き方になってしまうかもしれないが、昭和的な顔立ちとプロポーションで、時代や舞台背景にも自然に馴染んでいた。若い頃も年老いてからも一人で演じる夫役の小林薫とのシーンは、樹木より内田の方がしっくり来ていたと思う。
寂れた炭鉱町で、ほぼ女手一つで一人息子を育てる気丈で優しい母。特に優秀とか努力家というわけではないのに、というよりだいぶ自堕落でお調子者なのに、母親想いで同時に外の世界への憧れも持つ息子。
母の病気を知って一念発起し才能を開花させ、最後はとても孝行息子だった主人公。
それが単なるサクセスストーリーに終わらず、どこにでもある、でもそれぞれかけがえのない母と息子の物語になっているところが、たくさんの人の共感を呼んだのかなあ、と思う。
荒川良々や勝地涼など、コミカルな脇役たちが楽しい。
