TakaCine

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカのTakaCineのレビュー・感想・評価

4.8
ギャング映画の名作。
ロバート・デ・ニーロの憂いを帯びた表情が忘れられない。今回は229分の完全版を視聴。

完成までに10年以上を要した、セルジオ・レオーネの遺作にして渾身の大作です。

完璧な映像と極上の音楽で全編が彩られ、まるで芳醇なワインを楽しむような心地で、クラシカルで刺激的な世界を楽しむ大人の映画。ずっと浸っていたい…

解釈すらも放棄したくなるほどの映画芸術に溢れています。

マンハッタン・ブリッジと主人公の少年たちが映る美しい映画ジャケットが印象的で、ずっと観たかったのですがあまりに超大作すぎて、ずっと観られませんでした。
感動しすぎて、冒頭のキザな表現をどうかお許し下さい(笑)

セピア調のノスタルジックな映像がなんとも格好良くて痺れます!トニーノ・デリ・コリという方が撮影をされていて、レオーネ作品や『薔薇の名前』などを担当されていました。帽子を目深にかぶり視線が影に隠れる様は、ダンディズムを魅力的に映しながら、盗みや暴力でしか生きられない男たちの悲しき性を表しているようです。

美しくも悲哀に満ちた、エンニオ・モリコーネの音楽が最高に素晴らしい!彼の音楽がなければ、この映画の魅力の大半が消えてしまいそうなほど、魅力的です。パンフルートという楽器は、本作で初めて知りました。本作で流れる『Amapola』や『Deborah's Theme』は有名曲です♪

この作品を更に名作にしたのは、ロバート・デ・ニーロの名演!20代から60代までを演じきった繊細な演技の構築力と、「ザ・憂い!」と表現したい眼差し。悲しみ、後悔、怒り、愛憎、諦め…様々な感情を眼差しのみで表現します。スター性と才能が滲み出ている一流の凄さ、そして色気があります。ベタ褒めですが、それくらい素晴らしかった!

ジェームズ・ウッズの隠し切れない頭の良さと狂気、ジョー・ペシのいつキレるか分からない怖さ(たぶん『グッドフェローズ』の印象)など、俳優さんで書きたいことはたくさんありますが、デボラの少女時代を演じた、ジェニファー・コネリーの天使のような可愛らしさは、溜め息が出るほど美しかった。

特にドガの絵のようなバレエの練習シーンは、映像と音楽と彼女の美しさが際立ち、筆舌に尽くしがたいほど!

と、この映画のレビューをベタ褒めで終わらせたいところですが、初めて観る方向けに、ちょっとした注意点があります。

この映画の大好きな方は、以下の意見はきっと気分を悪くするかもしれませんので、先に謝らせて頂きます。好みの問題ですので、どうかご勘弁を。

まず話がちょっと長いかも。シーンの尺を取りすぎている気がします。素晴らしい映像で決して飽きませんが、ゆったりカメラをまわし過ぎて、少し疲れました。力量のある俳優さんたちなので、細かい感情が子細に読み取れた点は大いに良かったのですが。

演出がちょっとあざとい。極端なまでのズームインやクローズアップは迫力がありますが、多用するとチープ感が出ます。メイキャップの粗も。

話の構成が複雑。ネットでもこの作品の解釈で様々な憶測が出ていますが、ちょっと難解ですね。

決して批判したいわけではなく、素晴らしさと不可解さが同居した、アンビバレントな映画だとお伝えしたかったのです。

う~ん、レビューが難しい映画ですね。観ていると、レオーネ監督がいかに映画を慈しみながら撮り続けたかが痛いほど感じられます。

クリームいっぱいのケーキを我慢出来ず食べてしまう、少年に注がれる暖かい眼差し…大好きです。

いろいろ書きましたが、本作は映画芸術として素晴らしい作品ですので、人生で一度は観た方が良い映画だと思います。

そうしたら、その不可解な魅力に何度も何度も挑戦したくなるかもしれませんね。
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