No.279[枯れ果てたボギーの悲しい背中を見よ] 80点
『スティーヴ・ジョブズ』みたいな話の本筋も、金だけ持ってるクズ男たちのステータスとしてしか見られないエヴァ・ガードナーすらもどうでもよく、ただただ枯れ果てたボギーの優しくも悲しい佇まいにやられてしまう。一人だけ傘もささずに雨に濡れたトレンチコートに顔をうずめ、娘のような存在だったガードナーとの記憶を思い返す物悲しさだけでお腹いっぱい。彼女と過ごした日々は彼女に関わった男たちがそれぞれの時間軸で語るために断続的で、大衆出身者がだれもいないために一瞬にして時間が経過していくという特異な展開を迎え、その中でボギーはもどかしさと後悔に揉まれて本人以上に消耗していく。もうほんと、バコールが先に亡くなってしまう世界線のボギーって感じに見えてきて苦しかった。