イルーナ

チキンランのイルーナのレビュー・感想・評価

チキンラン(2000年製作の映画)
4.6
【養鶏所版大脱走】

『ウォレスとグルミット』や『ひつじのショーン』シリーズでおなじみアードマンが贈る、大作クレイアニメ。
『ペンギンに気をつけろ!』や『危機一髪』でそのあまりのクオリティの高さにガッツリとハートを掴まれてからのこの作品は、大変ワクワクさせられるものがありました。
加えて、ちょうど映画ファンになり始めていた時期だけあって、映画オマージュ盛りだくさんというのは尚更だったわけで。

物語のベースは舞台を養鶏所に置き換えた『大脱走』。卵を産めない雌鶏は処刑されて食べられてしまうという、死と隣り合わせの毎日。
(ガチの処刑シーンがあって、影の使い方といい音の使い方といい怖かった……)
そこにアメリカ生まれの空飛ぶ雄鶏、ロッキーが墜落してきたことで物語は大きく動き出す……?
このロッキー、養鶏所の鶏と同じく自由を求めていたのに、その先で真実を言い出せずに丸め込まれていき、ハッタリをかまし続けるうちに信用を得てしまい……
という流れなのですが、みんな表情が粘土のくせに絶妙すぎる。いきなり実力不相応の重責を背負わされていくのとか怖いよね。
思ったけど、本作に登場する男性キャラって尽く頼りないのばかりだ。代わりに女性の方がリーダーシップ溢れてる。そういう意味では時代を先取りしていた?

しかし、みんなでロックンロール踊るところとか、パイ焼き機内部での『インディ・ジョーンズ』オマージュとか、どうやって撮ったんだ?!
特に前者は、大量のキャラが入り乱れてる動き。これをクレイアニメでやると考えると、音楽に合わせた動きとか位置関係の把握とかとんでもない難易度だったはず。

そしてロッキーが失踪し万策尽きた……と思った矢先の、最後の作戦はスケールデカくて爆笑!
何と、「鶏小屋を飛行機に魔改造」!
もはやパイ焼き機脱出が可愛く見えるレベルのスケールのデカさですが、同時に「初めて空を飛んだ」という高揚感とカタルシスがすごい。
これも、飛びたくても飛べないという積み重ねがあったからこそ。ロッキーとの訓練の日々は無駄じゃなかった……よね?

キャラクターたちの活躍の配分も絶妙だし、鶏のキャラデザも翼が完全に人間の腕になってたりお尻も安産型だから飛べないことに説得力を持たせてたし、音楽もバラエティ番組でよく使われるくらいキャッチー。
収容所からの脱出というハードな題材ながらも本当に完成度の高いエンタメ作品なのですが、レビューサイトの点数を見ると(もちろん及第点は軽々超えてるとはいえ)なぜか思ったほど評価が高くない……
と思ってたら、何と12月に続編が配信されるらしい。20年以上経ってからの続編、やっぱり人気あるじゃん!
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