Keigo

噂の女のKeigoのレビュー・感想・評価

噂の女(1954年製作の映画)
3.8
ケンジミゾグチ作品4作目はフォロワー様が挙げてくださったこちら。

今作が公開された1954年は3月に『山椒大夫』、11月に『近松物語』が公開されていて、今作はその間の6月に公開されたらしい。
...1年に3本?しかも自分はまだ観てないけど傑作と名高いあの2本の間に...?

新藤兼人監督による溝口健二のドキュメンタリーを観たこともあって、田中絹代はもろんのこと、溝口組のスタッフの仕事も奥行きを持って感じられた。ただ、やはりあの2本の間の作品ということもあってか、溝口作品に感じる統制された画面からくる“圧”のようなもの、張り詰めた緊張感のようなものが、そこまで強く感じられなかった印象。だから悪いと直結する訳ではなくて、あくまで印象に過ぎないけど。

特筆すべきところはやはり田中絹代の演技。自分がこれまで観てきた田中絹代とはまた一味違った役どころで、母でもあり女将でもあり女でもあるという立場の間で揺れ動く心情の機微を、巧みに演じていた。

途中にあった能?狂言?のシーンが印象的。作品のテーマに通底する演目の劇中劇や映画等を主人公らが観ているというのは映画ではよくある展開だと思うけど、そこが日本の伝統芸能なだけで随分と独自性があるなと。まぁ、それは当たり前か。北野武の『首』でもそんなシーンあったなあ。

溝口健二の没年月日は1956年8月24日なので1954年はもう晩年も晩年。そこへ来て年3本のバイタリティ。しかも名作の間に挟まれた今作もこの面白さ。どうなっとんねんミゾグチ。

ちなみに8月24日は自分の誕生日でもある。だから何?というレベルの、でもなぜかちょっと嬉しい偶然も見付けた。


GEOレンタル 16/18
Keigo

Keigo