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哀しき獣のbuchikenのレビュー・感想・評価

哀しき獣(2010年製作の映画)
3.5
ノワールを意識した暗い画面、追跡、血みどろの格闘、間抜けな警察、宗教批判。

前作「チェイサー」を拡大再生産したかのような作品でした。

しかし本作の方は今一つ纏まりに欠ける印象。

それはあるターニングポイントをきっかけに、ストーリーの軸が増え、複雑化したため散漫になってしまったことが原因のような気がします。

物語の収束も、肩すかしに終わる印象で、余りピリッとしません。

興行成績も振るわず、前作の半分程度に留まっています。

予算は前作の3倍以上の820万ドル、撮影日数300日以上をかけたというのだから、大作と言っていいのかな?

この規模で300日はハッキリ言って掛け過ぎでしょう。

監督デビュー作で特大ヒットを飛ばした後の作品だっただけに、期待はハズレだったのではないでしょうか?

これ以降次回作まで6年かかったのは、本作の成績と、妥協なき撮影による長期の撮影日数が影響していると、個人的には勘繰っています。

撮影日数100日(それでも長い)の「コクソン」でさえ、1シーンのテイク数100回というのがあったと監督自身認める程、過酷な現場は業界では有名らしい。

長期撮影による予算の膨張とリスク増大に、これ以降出資者が限られたのではないでしょうか?

そして本作の次回作「コクソン」(2016年)以来、韓国では長編を撮っていない事が、それを補強している気がします。

あくまでも推測ですけどね。

とはいえ、拘り抜いた画面はどれも良く、前半部分は集中力が途切れる事なく見られるなど、決して悪くはないのですが、全体的には惜しい!といった感じでした。
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