ボブおじさん

チャイナ・シンドロームのボブおじさんのレビュー・感想・評価

チャイナ・シンドローム(1979年製作の映画)
4.0
今からちょうど38年前の1986年4月28日、ソ連・ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所で爆発事故が発生した。100万キロワットの4号炉がメトロダウン(溶融)したが、この事故による正確な死者・被爆者の数はいまだに発表されていない。

本作「チャイナ・シンドローム」がアメリカで公開されたのは、実際の事故が起こる7年前の1979年3月16日だったが、それからわずか12日後の3月28日には、ペンシルベニア州でスリーマイル島原子力発電所事故が発生し、この映画を模倣した犯人による陰謀説が流布されたりと、全米で大きな話題となった。

シンドロームとは、もともとは医学用語で一つの原因から生じる一連の症状(症候群)のことで「チャイナ・シンドローム」とは、〝ここアメリカで原発事故が起きたなら地中奥深くまで高温の核燃料が溶けて地球の裏側にある中国にまで突き抜けてしまうのでは?〟というあまり笑えないブラックジョークだ😅

原子力発電所事故を闇に葬ろうとする勢力に対して、ジェーン・フォンダ演じる女性TVキャスターらが真相を明らかにしようとして対決する。実際の福島第一原子力発電所事故を体験した今、この映画の先見の明に改めて感心する。

この映画の公開時には、馴染みのなかった原発事故の専門用語を、まさかほとんどの日本人が理解できてしまうことになろうとは😢

ただ、本作の中では大事故は起こらないので、ディザスター映画というよりは、サスペンス映画と言えるだろう。真相を究明し報道するジャーナリストとしての使命感を描くという意味では「大統領の陰謀」や「記者たち 衝撃と畏怖の真実」「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」などにも共通したアメリカ民主主義の信頼を描いた作品とも言える。



〈余談ですが〉
この映画が何と言っても凄いのは、福島第一原発はおろか、スリーマイル島原子力発電所事故よりも前に、この映画が作られたということである。

大きな事故や事件を教訓(ヒント)に映画が作られることはよくあるが、映画が指摘した問題が、不幸にも後に現実のものとなってしまったという訳だ。

不幸なことだがスリーマイル島原子力発電所事故が公開からわずか12日後に起きたことが宣伝効果にもなり、この映画はアメリカで大ヒットした。日本でも〝〜シンドローム〟という流行語は、その後多数生まれ、今でも使われている。