歯医者のお姉さん

ミラノの奇蹟の歯医者のお姉さんのレビュー・感想・評価

ミラノの奇蹟(1951年製作の映画)
3.8
そんなバナナファンタジー。と見せかけて風刺作品。キャベツ畑から赤ちゃん、育ててくれた素敵なおばあちゃん、数字、足下に幸せを、孤児院、鞄…なんて可愛らしい映画なの!というのが第一印象。ホームレスの小屋に二人でぎゅうぎゅうになって寝たり、寒くて足踏みしながら陽の光に群がったり(絶対オペラ歌手紛れ込んでる)、キラキラの笑顔で水ぶっかけて、グラッツェ!って走り去っていったり、みんなみんな可愛くて愛おしくて。私も日没を大切な人たちと見たいな、なんて思ったり。なのに…

"何でも願いを叶える鳩"の登場でみんなの欲望が溢れ出す。掛け算を唱えるシーンはヒヤッとした。モッビが言ってた「鼻は鼻だし指は5本」ってこういうことかと。私もホームレスも変わりなんてない、"私も心は君たちホームレスと同じである"、って意味かと思ってたけど、"君たちも所詮私と変わりはない"、って意味だったのかと。愛おしい日々がガラガラと崩れ去っていってしまって、トトさえも鳩の虜になってしまってとてつもなく悲しみが襲ってくる。

ラストの展開もおばあちゃんが連行されたりほうきで飛んだりと、微笑ましくはあるが、飛んで行った先がキャンプではなかったことが恐ろしくてたまらない。

思い返してみると、霊柩車を隠れ蓑にする人だったり、年になったらポイと孤児院を追い出されたり、挨拶に対しての罵倒だったり、退屈だからと自殺しようとする仲間だったり、予兆は沢山あった。沢山あったのにあの雰囲気に呑まれて、あれは冗談にすぎない、ギャグなんだと気付かぬふりをしてしまっていた…

なんでそんな残酷なことするの…と思ったら自転車泥棒の監督さんでしたか、納得(笑)