この映画の本質を描くために「数学の天才」である必要はあったのでしょうか
今日では名作と呼ばれる本作。実際に見てみるとその力強さはあまり感じず、普通に良い映画という雰囲気が漂っていました。脚本の出来、演出的な妙など飛びぬけて輝くワンダーは特に感じなかった。全体として思うことはストリングスが流れれば"良い映画"風になるなということです。
数学の天才だった低所得者を教授が発見し、その流れで心理学者と出会い、自己成長を促していくというあらすじ。心理学者との最初の会話が良かったですね。役者の演技の勝利のように見えました。心理学者の人の良さがにじみ出ている顔が良い。
数学の天才という要素が個人的に結構ノイズだった。図書館や家に本が大量にある描写がないにも関わらず、大学レベルの数学知識や教養を感じさせる発言。そこにとてもフィクション性を感じて、嘘くさいと思ってしまった。
数学の才能を認められたことがただの導入でそれ以降深く展開していかないところに違和感を感じた。それならば数学の才能のある青年である必要があったのかという疑問。また、街に縛られた青年という設定がセリフからしかわからず、絵的に何も感じない。縛られた状態に何も苦を感じていないようで、そこに外部からとかく言われるのはどうなんだろうと思ったり。
撮影に関してもまぁまぁ不満です。序盤の警察に殴り合うところからカメラが近いという見辛さがありました。それ以降も画的な美学を感じず、見辛いと思えるところが定期的にあった。
【総評】
名作と呼ばれている作品ですが自分としてはピンとこず、数学の才能がある主人公という設定に違和感を感じていました。心理学者のおじさん役者の表情が良かった。