ノラネコの呑んで観るシネマ

死刑台のメロディのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

死刑台のメロディ(1971年製作の映画)
4.5
1920年の米国。
強盗殺人事件の容疑者として、イタリア移民のアナーキスト二人が捕まり、死刑判決を受けた「サッコ=バンゼッティ事件」を描く裁判劇。
ジュリアーノ・モンタルド監督の71年の作品だが、観たこと無かったので、モリコーネ特集のリマスター版で初鑑賞。
免罪事件の映画と言うと、圧倒的に黒人が被害者の作品が多いが、白人同士でも差別はある。
この事件の場合イタリア人やアイルランド人、ポーランド人といった遅れて来た移民たちが搾取された結果、労働運動と結びつき、保守的な権力から目の敵にされる。
裁判なんてびっくりするぐらいメチャクチャで、検察官も判事も陪審員も最初からヘイト剥き出し、有罪にする気満々。
ここでは真犯人かどうかではなく、アナーキストであること、イタリア人であることが罪なのだ。
クイックなズームやボケの多用など、テリングのクセは強いが、理不尽過ぎる裁判を何とか覆そうとする弁護団の奮闘や、二人の主人公の対照的なキャラクターなど見どころは多く、結果が分かっていても面白い。
浮かび上がるのは、搾取と支配に抵抗する者を許さない、権力という暴力装置だ。
赤狩りなんかもそうだが、権力が恣意的な暴力を振るいはじめるど、マイノリティもマジョリティも、逃れられる者はいないと言う恐ろしさを感じさせる。