スワヒリ亭こゆう

エレファントのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
4.5
20年前に公開された映画です。
監督はガス・ヴァンサント。製作にダイアン・キートンがいます。
カンヌでパルムドールを受賞した本作。
【コロンバイン高校銃乱射事件】を扱った作品です。
1999年に起きた出来事を2003年には製作して公開までしている。このスピード感は日本では考えられないですよね。不謹慎だと言われてしまうでしょう。
実際、この事件は多くの死傷者を出しただけでなく高校で起き犯人はそのコロンバイン高校の生徒だったというのは日本でもかなり大きなニュースとして取り上げられていました。
この事件があってもたまに銃乱射事件は起きています。英国でアリアナ・グランデのライブで起きた惨劇など記憶に新しいです。

その痛ましい事件を映画にする。賛否両論ありますが、映画を観てから判断するという文化がアメリカにはあるのかなと思いました。日本だったら公開すら危ういですよね。日本の映画は芸術として認められていなくて自由な表現は難しいです。現に不祥事を起こした芸能人が出ている映画がお蔵入りする事もあります。その点、アメリカは自由。観客がちゃんと責任を持って映画を観て判断している点を踏まえると日本は遅れていると言わざるを得ませんね。

本作の高校生はみんな本名で演じていてリアルにオーディションで選ばれた高校生たち。
台詞などもその場で決めていったみたいです。演技の様で演技じゃない。高校という場所をリアリティを大事にして描いています。カメラは複数の生徒を後ろから追いてまわり撮っていきます。
タイトルの『エレファント』は諸説あるみたいですが【群盲像を評す】という意味が一番しっくりくる気がします。
高校で起きた銃乱射事件の犯人はイジメられていたという証言があります。1人の視点ではなく何人かの視点で事件を描いた事で高校生活を浮き彫りにして事件をより鮮明に描いていると思いました。
犯人の視点でも描かれていて、イジメられているからといって同情は出来ませんが、犯人が何故犯行に及んだか?自殺して証言は得られませんが、彼らがどういう生徒だったのかを描いています。
勿論、この映画の登場人物はコロンバイン高校の生徒の誰かではないんです。脚色した上で犯人がイジメを受けていた事などは再現しているんですね。

決して楽しい映画ではないです。観る前から【コロンバイン高校銃乱射事件】を扱った映画だというのは知って観た方が良いです。銃乱射事件を映画のストーリーのオチみたいに思うのは違いますから。
銃社会じゃない日本人の高校生にも観て欲しいです。
無差別に人を殺す事、銃社会の怖さなど日本が、この先に銃社会というのを選択しない為にも悲惨な事件から学び、アメリカの銃社会を反面教師にしていかないといけません。