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ジョゼと虎と魚たちのCinemanのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
4.0
『ジョゼと虎と魚たち』
犬童一心監督
2003年公開 日本
鑑賞日 2023年6月23日 U-next

初めて観たときにも感動したけれど、
19年ぶりに再見して、
こんなに面白い作品だったのかと改めてビックリ!

『ウォーターボーイズ』『悪人』『涙そうそう』の妻夫木聡と、
『大阪物語』『きみはいい子』『凶悪』の池脇千鶴が主演し、
『天然コケッコー』『ワンダーウォール』『エルピス-希望、あるいは災い』の渡辺あやが脚本で、
『名付けようのない踊り』『メゾン・ド・ヒミコ』『最高の人生の見つけ方』の犬童一心が監督。

面白い映画にならない分けがない。

【Story】
大学生の恒夫(妻夫木聡)がアルバイトしている雀荘で話題になっているのが近所で見かける乳母車を押したお婆さん。
あれは何を運んでるんだ?
婆さんは運び屋で大金や麻薬が積まれているんじゃないか?
という噂もある。

早朝雀荘のオーナー(陰山泰)の愛犬を散歩させている恒夫の眼の前の坂道を乳母車が転がってきた。
ガードレールにぶつかって止まった乳母車に恒夫が近づくと毛布の下から粗い息が聞こえる。
恒夫がそっと毛布をめくると若い女性が包丁を握りしめて恒夫を睨んでいる。
そこにお婆さんが「くみ子」と呼びながらやってくる。
恒夫は2人を家まで送った。

お婆さん(新屋英子)が朝食を食べて行かないか?と恒夫を誘い、いかにも生活保護で暮らしている粗末な小さな家なので恒夫は躊躇する。
「いやか?」と言われて恒夫は断れず家に上がる。

料理は女性がつくっている。
ごはん、味噌汁、ぬか漬け、卵焼きの朝食。
ひとつひとつがとても美味しいので思わず恒夫の顔もほころぶ。
台所の台に乗って調理していたくみ子(池脇千鶴)は作り終わるといきなりどすんと床に飛び降りて床を這いながら自分の部屋に行った。
くみ子は下半身が麻痺していて歩けないのだ。

「だし巻き、おいしいです」と恒夫が声をかけると「あたりまえだ、私がつくったんだから」とくみ子は無愛想に答えた。
くみ子の部屋は本であふれかえり彼女はとても物知りだった。
本はすべて祖母がごみ捨て場から拾ってきたものばかりだ。

大学のカフェテリアで同級生の香苗(上野樹里)が就職のことを恒夫に相談している。
香苗は恒夫に気があるようだ。
恒夫にはセックス・フレンドのノリコ(江口徳子)がいた。
恒夫は福祉を学んでいる香苗にくみ子のことを話す。
部屋の様子や床にどすんとダイブするという話もする。

恒夫が再びくみ子の家を訪ねるとくみ子は顔に怪我をしていた。また誰かに襲われたのだと言う。
恒夫はたびたびくみ子の家を訪れるようになる。
福岡の実家から送られてきた野菜や明太子などをくみ子の家に持っていき一緒に食べた。
くみ子に名前を聞くと「ジョゼ」だと答える。
フランソワーズ・サガンの小説に登場するヒロインの名前だという。

ジョゼの散歩は早朝と決まっていたが恒夫は乳母車にスケートボードを取り付けて自転車に負けないくらいのスピードで昼間ジョゼと散歩した。
散歩の途中で自動車整備工場に立ち寄ってジョゼはガラの悪い幼馴染の幸治(新井浩文)を恒夫に紹介した。
家に帰ると昼間にジョゼを連れ出したことがバレて祖母は怒りをあらわす。
くみ子はこわれもなんだ人様の前に顔を出してははいけないんだと怒り、帰ってくれと言う。

恒夫はホームセンターでばったり幸治と出会い、ジョゼと幸治が同じ施設で育ったことを聞く。
市に申請すれば無料でバリアフリーの工事をしてくれることを香苗から聞いた恒夫はお婆さんにそのことを教えるがそんなうまい話があるわけがないと取り合わない。
恒夫が申請に行き工事が始まった。
工事を請け負う会社の主任(板尾創路)に「大学生なのにボランティア精神にあふれてて偉いな」と褒めらる。香苗も将来の仕事のために見学させてくださいと無神経にやってくる。
恒夫はジョゼを気にするがジョゼは傷つき祖母は恒夫にもう来るなと言う。

ジョゼの家に通わなくなり香苗と付き合い始めた恒夫は就職活動で例の工事業者を訪ねた。
そこで主任からジョゼの祖母が突然亡くなったことを知って慌ててジョゼを訪ねる。
ジョゼは最初「帰れ」と怒っていたが恒夫が帰ろうとすると泣きながら恒夫にしがみついて「ずっとここにおって」と頼む。
恒夫もうなずき2人は愛し合う。
ジョゼは好きな男の人が出来たら世の中で一番怖いものを一緒に見に行きたかったと言う。
ジョゼが一番怖いのが虎。
二人で動物園に虎を見に行った。
虎の檻の前で恐怖で固まるジョゼ。
恒夫はジョゼの家に引っ越して2人の生活が始まる。

この後香苗とジョゼのいがみあいがあったり。
一年が経って恒夫が実家の法事にジョゼを連れて行こうとしたり、
ジョゼは生まれて初めてドライブの長旅を経験したり、
ジョゼが楽しみにしていた水族館が閉まっていて恒夫が苛立つジョゼに手を焼いたり、
二人は楽しく暮らしていたが・・・

チャラ男だが心根は優しい妻夫木聡と孤独に耐えて本だけで世界と接していた池脇千鶴のコンビネーションがとてもいい。
障害者は人様の眼の前に姿を晒すべきではないのだから早朝人気のない時間にだけ乳母車にジョゼを乗せ上に毛布をかけて散歩するお婆さん。
そんなことでしか世間の空気を吸えないジョゼ。
哲学書や参考書、小説からエロ雑誌に至るまでゴミ捨て場に捨てられていた様々な本からすべての知識を得ていたジョゼ。
じっと孤独に耐えて生きてきて人には強がって命令口調でワガママを貫き通してきた生意気なジョゼが去っていく恒夫に泣きながらしがみついて「ずっとここにおって」というシーンは胸に迫ります。

【Trivia & Topics】
*原作。
田辺聖子の短編恋愛小説。韓国版リメイク(2020)、アニメ化(2020)されている。

*受賞歴
受賞(実写映画)
作品賞
・第77回キネマ旬報 日本映画ベストテン第4位。

・第26回ヨコハマ映画祭 日本映画ベストテン第5位。

・第47回朝日ベストテン映画祭 第5位。

・第46回ブルーリボン賞。

個人賞
・第54回芸術選奨映画部門 文部科学大臣新人賞(犬童一心監督)

・第77回キネマ旬報 最優秀主演男優賞(妻夫木聡)

・第2回 ロシア・ウラジオストック映画祭 最優秀主演男優賞(妻夫木聡)

・第29回報知映画賞 最優秀主演男優賞(妻夫木聡)

・第18回高崎映画祭 最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(妻夫木聡)、最優秀主演女優賞(池脇千鶴)

・第48期三浦賞。

【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。
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