つかれぐま

デルス・ウザーラのつかれぐまのレビュー・感想・評価

デルス・ウザーラ(1975年製作の映画)
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「人間は自然に対してもっと謙虚でなければならない。我々も自然の一部であり、調和が必要なのだ。デルスから学ぶことは多い」
 ー黒澤明

ロシア帝国末期。
未開の地シベリア探検に赴いた軍人と、案内人の猟師デルスウ・ウザーラの友情の物語。黒澤明がソ連で撮った唯一の海外作品、全編ロシア語で邦人俳優は無。

<第一部>
どこからともなく現れて、どこかへと消えていく。結局デルスウは「山の妖精」だったのか。そういう幻想的なフィルムの中で輝くのはシベリアの大自然とデルスウの生命力。

<第二部>
超人・デルスウにも訪れる「衰え」。
自然の中で生きるからには、その摂理から逃れることはできない宿命。自殺未遂を経て、映画監督として明らかに曲がり角を迎えた黒澤自身の姿が投影されており、終盤は哀切極まりない。もはや彼の作品世界に「超人・三船敏郎」はいない。その喪失感。

物質文明への懐疑もテーマ。
この物語の数年後、革命を経て人類史上初の共産主義国家・ソヴィエト連邦が誕生する。本作やタルコフスキーなど多くの傑作が生まれた時代だが、ソ連崩壊後はその火が消えてしまったのが皮肉だ。

レンタルDVD:HDリマスター141min