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ヨーロッパ一九五一年のhasseのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ一九五一年(1952年製作の映画)
3.6
演出3
演技4
脚本3
撮影4
音楽4
技術4
好み3
インスピレーション4

○「あなたは一人じゃない 私がそばにいるわ」(イレーヌ)

イングリッド・バーグマンをまた観たくて。

息子を自殺で失った女性イレーヌは、「自分がもっとそばにいてやれればこんなことにはならなかった」という深い悔恨から転じて、貧しい人々への支援活動を始める。ともすれば有閑階級の慈善事業とも取られそうな彼女の行動原理はただ隣人への愛、社会的に弱い立場にある人々に寄り添いたいという純粋な気持ちである。
しかし、彼女の行動は周りの大人たちに理解されない。彼女を政治的・宗教的な異端と決めつけ、精神病院に隔離することで、社会の異分子を排除しようとする。「家族を省みず他人に付きっきりになるなんてあり得ない」といった固定観念、硬直した社会的規範に基づく判断である。

戦後の傷痕生々しい社会のなかで「他人への愛」を実践する者たち(イレーヌだけでなく、孤児を引取り育てるシングルマザー(Jマシーナ)も)と、それを理解できず/しようともせず異常と断定する者たちを対比的に描き、「他人への愛」の不在をあぶり出すことには成功してはいるが、ラストのイレーヌ=聖女様呼びを見ると、やはり「他人への愛(隣人愛)」は宗教を絡めないと十分に描くことができないのか?と思ってしまう。

また、イレーヌが好意的に受け入れられすぎ(金持ちがあたしらに何の用だい、などと突っぱねる役どころが皆無)なのもうまく行き過ぎな気もする。

撮影時、バーグマンは35,6歳といったところか。先に観た『カサブランカ』のようにハリウッド式・女優を綺麗に撮る手法はもちろん採っていないが、本当に上品で綺麗。笑顔のシーンが少ないのは悔しかったが。あと、女性らに混じってるシーンだと身長高いのがとても際立つ。
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