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パリ、テキサスのyuzameのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.0
30年前から
タイトルもイメージビジュアルも
知っていた。
ヴィムヴェンダースが撮った事も。
でも内容は全く知らなかった。

赤いキャップ姿で荒野に佇むおじさん。
キッチンカウンターに座る超美人。
私の知ってたビジュアルからは
どんなストーリーか
全く想像が出来てなかった。

こんなストーリーだったんですね。
やっと会えましたね。という感じ。

30年寝かせて今の年齢で見て良かった。
10代の私が見ても
ピンと来なかったと思う。

オープニングの荒野は
時を超越した場所だけど、
40年前のアメリカの
色んな地点の様子が映っていて
それを見てるだけでも興味深かった。
だだっ広い平地が広がる
テキサスの寂れた田舎町。
高低差がすごくある、LAの
住宅街やハイウェイ。
テキサスいちの大都市
ヒューストンとその郊外。

今から見ると随分のんびりした
スピードに見えるけど
そんな暮らしからも
振るい落とされちゃったトラビス。
社会性ゼロの男。でも悪い男じゃない。
しかし社会性ゼロ。
ジェーンも褒められたもんじゃ無いけど
悪い人間じゃない。

広い道路。ボロいピックアップトラック。
その荷台でランチ。ベンチシート。

トラビスとハンターが
距離を縮めてくパートは
ハッピーな空気が満ちてて、
ズルいなと思った。
じいちゃんと孫みたいだったけど。

鏡越しの個室テレクラみたいなお店での
トラビスのほぼ1人語り。
その前のハンターに向けての
カセットテープ。
ジェーンも本心を語る時は
トラビスに背中を向けてた。

あの気持ちが凄くよく分かる。
頭の中では色々考えてても、
いざ実物の相手を目の前にすると
思ってたように話せない。
相手のリアクションも予想と違う。
そりゃそうだ。違う人間なんだから。
一旦、ひとまず、一方通行の方が安心。
頭の中、思い出の中の相手。
面と向かうより
テキストメッセージの方が気楽。

愛してるから〇〇。
愛情を免罪符にして、
愛しているはずの相手を蔑ろにする。
愛しているのに関係が壊れてしまう。

トラビスもジェーンも、
ハンターやアンやウォルトの事を考えると
身勝手極まりない。
1番優先するべきはハンターの幸せ。
はて、そう考えると、
ハンターは案外幸せそうだ。
パパもママも2人ずつに増えた!
ぐらいの気持ちだと思う。
とにかく、4人の親達は
ハンターを愛している。
それが彼にも伝わっている。
そして彼らはハンターを尊重している。

まず、ウォルトとアンが
トラビスとジェーンを
尊重してるんだよね。見下してない。
それがすごい。
その優しさが半端無いなと思った。
その神様レベルの懐の深さで
みんなが救われてる。
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