aaaakiko

ロッキー2のaaaakikoのレビュー・感想・評価

ロッキー2(1979年製作の映画)
5.0
エイドリアンはシリーズ中数々の名言を残してきましたが、わたし個人的に一番の名言は「アインシュタインは2度退学になった」でも「Win!」でも「For you. Just you. Just you alone」でもなく、このパート2の新婚初夜にロッキーに言った
「私に飽きないでね(I hope you never get tired of me)」
だと思っています。
それに対して「それよりオレを捨てないでくれ」と答えるロッキーも良い。

プロポーズされてもなんとなく自信なさげに笑うだけだったエイドリアン。
彼女はずっと自分に自信がなかったんだなあ。そして不安であったのに違いない。私なんかに、この幸せが本当に続くのか。
子どもができたことがわかり、もし男の子ならあなたに似てほしい、女の子なら「きっと私と正反対の子よ。歌とダンスを習わせるの」と言ったエイドリアン。きっと自分も、もっと明るければ、もっと美人なら歌やダンスを習いたかったんだろう。
一見陽気なロッキーに対して、根暗なエイドリアンには不安がつねにありました。

ちなみに、ラスト30分のロッキーVSアポロの試合。あれ撮影に750時間かかったんですって。
あの試合会場にエイドリアンがいなかったのは、その撮影にタリア・シャイアが同席できなかったため、家で見ているという設定になったんだとか。
タリアには別の映画の撮影が入っていて、その映画というのがジョン・フランケンハイマーのカルトホラー『プロフェシー恐怖の予言』。Blu-ray発売されたらしいですね。

そんなことはさておき。
早産で倒れたエイドリアンが、目覚めた後、「Win!(勝って!)」と言うわけですけど、よくここのエイドリアンがなぜ急に心変わりしたのかわからない、と言う方がたまにおられますが、そんなもの、エイドリアンだって最初から応援したかったに決まってるじゃないですか。
好きな男のやりたいことは、真っ先に応援したいに決まってるでしょう。
でも右目が失明するかもしれないとなれば話は別。このときばかりは最初はミッキーだって反対してました。右頬ひっぱたくシーンはけっこうショックでしたね。
誰かの希望に反対するってことは、単純に賛成するよりも労力を使いますし、非常に大変なことです。相手に嫌われることも覚悟しないといけません。
でもエイドリアンは反対した。
ただでさえ妊娠中ってのは不安なものなんですよ。今みたいに、高度なエコー検査設備なんてなかっただろうし、どんな子が生まれてくるのか、健康な子なのか、自分は出産に耐えられるのか、その他ありあまる不安を抱えていっぱいいっぱいなのです。
だいたいあの子、つわりってあったのかしら?彼女はあまり女性の権利みたいなことを主張しないから、こっちもこういうことあまり言いたくないけど、つわりの時期ってロッキーがあの変なCMやらされてる頃じゃないの?
そうこうしているうちに、ロッキーは仕事を失い、エイドリアンは再びペットショップで働き始めることになる。
これにはロッキーは反対したし、でもエイドリアンが働きたいって言ったんだから、ロッキーを責めるつもりはない。わたしでもそうしただろうなと思うから。だって、ロッキーが再びボクシングをやって、失明するよりはずっとマシだもの。
それでも、ロッキーはやはりファイター。ボクシングがしたいと言う。
「お前に女をやめろと言ったことはないだろう。たのむよエイドリアン。おれに男をやめろと言わないでくれ」
ああ、言われてしまった。
たぶんエイドリアンだって、想像はしてたことじゃないのかな。
いつかはこうなるかも…
でも彼はいったいどうなるのだろう?
出産の日は、刻一刻とせまる。
不安でいっぱいのところに、一気にストレスが来て倒れてしまった。

そして目を覚ましたら、どうやら自分は、乗り越えられたと気づく。赤ちゃんも無事だとわかった。
いっきに安心できた彼女は、やっと夫を全身全霊で応援することができた。
「Win!(勝って)」
そういうことです。

その直後に、同じくエイドリアンの病室で待っていたミッキーが「なにをボヤっとしてんだ!」と阿吽の呼吸みたいに叫んでトレーニングモードになるのも良い。
また、エイドリアンが意識不明状態でいるとき、いちどポーリーがお見舞いに来るんだけど、ロッキーが枕元にいるのを見て、黙ってその場を離れるっていうシーンも良い。
持ってきた花束を、そのへんに捨てて帰るんだけど、わたしこういうポーリーとエイドリアンの兄妹の関係も好きなの。
ポーリーはやっぱり誰より妹を心配してるわけ、態度は悪いけどね。
でもロッキーに遠慮するのよ。

パート2では他にも、ポーリーとミッキー、ガッツォさんとペットショップのグローリアだけが参列してくれた、簡素な、でも温かい結婚式も良かった。
アポロ・クリードの奥さんが初めてちゃんと出てきて、彼の家庭がほんの少し垣間見えるのも見どころ。

それにしても、ベッドで眠っているエイドリアンの寝顔の美しさよ。彫刻みたいで見惚れてしまいます。
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