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婦系図(おんなけいず)のENDOのレビュー・感想・評価

婦系図(おんなけいず)(1942年製作の映画)
4.2
川開きの日に煉瓦造りの船着場の倉庫で再会する幼馴染の2人。おぼこい五十鈴の演技に冒頭から心を奪われ、終盤の画面の奥に幽玄と立ち現れる年増の島田髷姿に痺れる。黒沢清のトーン。気合いの入りまくった最初で最後の夜の散歩の長回しは鬼気迫る。有名な【湯島の境内】での別れ話は、咲き誇る梅越しにクレーンで2人を執拗に追い回し、ベンチの目線となって落ち着く。先生こと古川緑波の面倒見の良さとウザさは裏表。長谷川一夫はいつも抑圧される。一夫は化学を履修してるらしく、妻を喜ばそうと居間の電灯を消し、自家製の線香花火を灯すロマンチスト。その一瞬の輝きは関係の儚さを予感させる。化合物の論文を完成させるが、1枚残らず五十鈴に風呂の焚き付けにされる。学がないから別のことでフォローしようと座布団を繕い、夫婦茶碗を買うどこまでも甲斐甲斐しく意地らしい五十鈴。その死に顔の白さ。俺を一夫と思え!と叫んで臨終の際、手を握りしめる緑波。演技の温度が異常!2人が別れた後は終始湿度も高め。典型的なtearjerkerだがその演出にどこまでも息を呑む。
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