KengoTerazono

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>のKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

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黄色、赤、青、緑。砂漠の色がカフェやモーテルの色になっている。

キャメラの位置を変えるのではなく、ティルトやパンによるキャメラの向きを変えることで移動する対象を捉えているから、ショットサイズとキャメラアングルがよく変わる。客体が大きくなったり小さくなったりするのは楽しい。
構図が斜めに切り取られがちだが、ブレンダとジャスミンの関係性が進展するにつれて段々と角度がつかなくなる、、、気がした。
反復という主題があるのではないかと思った。序盤のシークェンスでは、隣り合うショットがダブっているし、車が何度も同じ場所にぶつかるショットはバンク感がある。中盤のマジックショーとモデルのシークェンスは反復しながらも徐々に変化している。
枠の使い方がおもしろい箇所もいくつかあった。序盤、ブレンダとその夫が魔法瓶を戻す戻さないの言い争いをしていたシークェンス・ショットではキッチンの枠が2人を区切っていたし、車内にいる夫が前景に、その後景に睨むブレンダがいるショットでは車窓が仕切りになっていた。サロモのピアノをジャスミンが聴き入り、白人の老人がジャスミンに見惚れるシークェンスでは仕切りを挟んでサロモ・ジャスミンと老人が区切られ、そこを縦にブレンダが横切る。スクリーンというフレームの中にあるフレームを上手く使っていた。

この映画のターニングポイントはブレンダがジャスミンに「言いすぎた」というシーン、ミッドポイントはジャスミンのビザが切れるところ、そしてクライマックスはジャスミンが老人からプロポーズを受けるシーンだと思う。そしてこの映画はクライマックスで幕を下ろす。

ジャスミンとブレンダの間に芽生えたかけがえのない何かーそれは男がいなくなったことによって芽生えた何かーが、男の介入により変化が起こるかもしれない分岐点を最後にみた気がする。
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