しゆあ

さよなら子供たちのしゆあのレビュー・感想・評価

さよなら子供たち(1987年製作の映画)
4.4
数多くの無為な戦争映画たち、戦争ごっこは大概にせえよ

生徒たちの繊細な人物描写にしみじみとしていたら、ふいに不釣り合いな暴風が襲ってくる。息をつく間もなく展開が進む。気がついたらあってはならない悲劇で幕が下りる。死へと連行される校長と三人の同級生たちを、ジュリアンはあっけにとられながら見つめ続ける。そしてエンドロールを呆然と見つめる僕たち。こんな結末があっていいんですか......、と。
僕たちはジュリアン(あるいはルイ・マル自身)と一緒になって呆然となり悲しくなる。この悲痛な感情こそ本作が傑出した作品である証しだ。僕たち観客は戦争の特異な暴力性を、本作を通じて生に感じることができる。暴力。理不尽の、日常全体を支配する、日常に隣り合う、そしてふいに襲ってきて癒えることのない極限の痛みを与える......、そんな戦争の暴力性を。
同じ戦争映画でも、本作よりも有名であろう『フルメタル・ジャケット』の派手なスペクタクルに比べれば、本作の撮り方は果てしなく地味な思える。それは戦争映画というクリシェを脱ぎ、戦争を日常の側から映し、生の戦争経験を伝えるためにほかならない。観終えた観客に与えられる経験は比べようもなく生々しい。映画を観ようと服をだらしなくして席に座る、その感覚の延長上に痛みを覚えるからだ。
戦争下の市民は日常を生きている。その最中で突如、今までの日常から恐ろしいほど乖離した暴力に襲われる。ジュリアンの痛みに僕たちは共感する。日常を引き裂く戦争の劇的な痛みの瞬間を、監督は本作の内に確実に捕らえたのだ。

以下レビューとは無関係な思い出話を少し。観ているといくつかのシーンに見覚えがあった。おそらく学部時代に授業で一部見せられたんだと思う。学部一年のときに受けたA先生のフランス文化の授業だったか、もう5年も前の話なので確信は持てない。卒業したのは2年も昔。入学した頃の記憶もうまく思い出せなくて当然、と悲しくも思う。
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