かすとり体力

ビフォア・サンセットのかすとり体力のレビュー・感想・評価

ビフォア・サンセット(2004年製作の映画)
3.9
旅先で偶然出会い別れるまでの14時間を描いた前作から9年後、2人がパリの町で再開し、別れるまでの85分を描いたもの。

っていうこの時点でエメぇ・・・。
もうエメぇ・・・。

前作もエモくて最高で、レビューで「本作は恋愛の一領域「刹那的・時限的な恋愛の美しさ」を高純度で抽出することに大成功している(っていうかそれしかしてない)」
って書いたんだけれど、

本作はそれに加え、「恋愛とは駆け引きである」、

もっと色気なく言うと
「恋愛とは、双方が相手に関する十分な情報を持っておらず、また、情報を取ろうとする挙動自体が二人の関係性を変容させ得るという特異な条件下において、その条件すらお互い認識していない振りをするというルールの制約を受けながらも、それでもなお互いにコミュニケートし合い、互いの効用を最大化しようとする不完全情報ゲームの一種である」という恋愛の別側面の本質を描き出している。
(ここまで言語化するともはや色気がないどころか普通に分かりづらいな・・・)

いやもうさぁ、二人は、どっちもお互いのことまだ気になってるじゃん!自明じゃん!
だからこそジェリーは本を書いたんだし、セリーヌは書店に来たんでしょう!

でも、それは言えねぇわな。それを言わないまま、互いが互いの気持ちを確かめ合っていく、その意思と挙動の総体が「恋愛」でしょうよ、ってこと。
(なんでべらんめぇ口調になってるか分からんけど)

だってこんなもん、ビジネス文脈なら一瞬よね。

「すいません、まず議論の視座を合わせるためにファクトの擦り合わせだけ済ませておきたいのですが、あなた、今でも私のこと好きですよね?なお、私はあなたのことが好きです」「はい」

瞬殺!!!

こういう合理で割り切れないから良いんであって、ロゴスじゃなくてパトスだから良いんであって、結局まぁ最短距離じゃないから良いんですね。恋愛。

って考えるとやっぱ恋愛の本質って「かけ引き」なんですよ。それを非常に巧み、かつちゃんとエモく描いてくれているんですよ。

かつ本作、作中の時間の流れと実際の上映時間がほぼ同じ。
つまり「2人の85分」をそっくりそのまま見る構成。

これがまたエモい。そしてこれがなんでエモいのか、今考えてみたけど分かんないんだこれが。

この85分の中に、上述の駆け引きのあらゆる要素が詰まっていて、それが「時間の流れ」そのものを再認識させてくるから?
うぅん。。

しかしまぁ、非常に良かった。エモかった。
週末に次作(これがまた本作の9年後!!)、「ビフォア・ミッドナイト」観ます。
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