暗い笑
日本映画は暗い作品も多く、私はそういう作品が嫌いなわけではない(というか結構好きだったりする)んだけれど、それにしても暗い。
それもそのはず、門脇麦が演じる綿子は作中で、前向きな意思決定を何一つ行わない。
逃げる・かわす・先延ばしにする。
そういった消極的な意思決定だけをひたすら繰り返すもんだから、そりゃもうどうしたって暗いトーンになる。
綿子が最後の最後にするジャッジだけは能動的・主体的なものに見えるが、これもまた「現状から逃げるための」能動的な意思決定なので、結局逃げてはいるという。
ということで、私としては本作から何か積極的なテーマを感じることは難しかったというのが正直なところではあるが、本作においてそれを補って余りあるのが夫の文則を演じた田村健太郎。
「「誠実」というセルフブランディングをしようとしている器の小さい男」の全てを体現しきっている。
うわあこういう男いるよ~~、っていうか、俺の中にも一部「文則」な部分あるよな〜〜
っていうことで、彼を観ていてなかなか身につまされるところがあった。。
この、「自分はフラットに、合理的に考えているだけですよ」感を出しておきつつ、そのロジック構築のエネルギー源は自身の中の嫉妬や承認欲求などのネガティブな感情である、というこのイヤな感じよ。
やっぱ改めて思ったけど、人と人とが分かり合う上で、ロジックってほぼ価値持たないよな。
ロジックって「世界の切り取り方の一つの筋」に過ぎないのであって、そもそもお互いが理解し合おうとしている状況ならそのための有効なツールになるけど、
そもそも理解し合おうとしていない状況下においては「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前の中ではな」状態にしかならんよな。なんか掘ったら根深そうな話だ。。
ということで。
私の中で本作は、田村健太郎のイヤな男感を堪能するための作品でした。