HiromiA

ニュー・シネマ・パラダイスのHiromiAのレビュー・感想・評価

3.8
 平成元年この映画はどこで観たのだったのだろう。その当時この映画を見てやっぱり映画っていいもんだよなあなんて思った気がする。映画を観るようになり映写室やフィルムの切れ端にはなんか思いめぐらすものがあった。今じゃデジタル上映なので場面をカットしてもフィルムの切れ端なんて出てこない。好きなシーンをつなげて自分なりの作品を作るのもダウンロードした映画をちょっとしたソフトを手に入れれば何とかできちゃう。でも昔はそんなことはできなかった。ビデオテープで手に入れた映画をコピーガードをかいくぐってつなげることはできたかな。キリスト教会の神父が映画館を経営し独自の検閲を行った後の上映という特殊さはあるが、検閲ではじかれたシーンをつなぎ合わせた最後のフィルムを観ていて甘酸っぱい懐かしさでいっぱいになるサルヴァトーレの気持ちは涙が出るほどよくわかる。でもアルフレードはそんな懐かしさに浸るのはしっかり成功した暁なんだと、成長途中でそんなものを振り返ってはいけないんだと訴えていたのが心に響くなあ。「エンドロールのつづき」でサマイに対し先生がかけた言葉とおんなじで、田舎に留まっていたんじゃ何もいいことはないというアルフレードの考え方は都会と田舎の環境の違いだけでなくそこに住む人々の気持ちの問題なんじゃないかな。より高みを目指すためにはぬるま湯につかっていたんじゃ無理だということ。人生の半ばを過ぎ余生に足を踏み入れた今、より一層アルフレードの言葉が身に染みたなあ。
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