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女は男の未来だのmaverickのレビュー・感想・評価

女は男の未来だ(2004年製作の映画)
4.1
2004年の韓国映画。ホン・サンス監督作。


ホン・サンス監督の初期作品。インディーズ系な緩い作風だが、彼らしい味わい深さに溢れた作品である。一人の女性を取り巻く男二人の物語で、男女間の複雑な心情をリアルに映し出している。一見するとストーリーや関係性がめちゃくちゃに思える。でも人ってそういうもので、時に理解し難い行動をする。理解し難い行動にもきちんと意味があり、行動心理を基に突き詰めればそれが理解出来るようになっている。監督はそういう人間の行動心理を見事に表しているなと。淡々とした会話劇の内容でありながら、引き込まれて見てしまうのはそうした理由から。何気ない会話の中にもそれを感じさせ飽きさせない。

主要人物は3人。大学で美術講師をしているムノと、アメリカ留学から戻ってきたばかりの先輩で映画監督のホンジュン、2人が関係を持った女性のソナ、である。ムノを演じるのは『オールド・ボーイ』のユ・ジテ。ホンジュン役は『JSA』のキム・テウ。ソナをミス・コリア出身の ソン・ヒョナが演じる。3人ともオーラを消した自然な演技。役柄の心情を見事に表し、それぞれの人物に愛着を感じさせる。くっついたり離れたりと、いい加減な関係性なんだけど、それが何とも人間っぽく思える。人間のズルさ、卑しさ、浅ましさ、そういうものをみんな嫌悪するけど、でもみんなそれを持っている。だからこそ、この3人はどこか憎めないんだよね。



何気ないシーンも味わい深い、ホン・サンス監督らしさに溢れる作品だった。喫茶店で好みの女性店員に個別に声をかけるシーンが滑稽だったが、ああいう描写も何だかリアル。宅飲みしている時の雰囲気も凄くリアルだった。ホン・サンス監督は人間を描くのが本当に上手い。近年の作品はアートでお洒落な雰囲気も感じさせるが、初期作品は生々しさに満ちていてそれも良い。全作品制覇したくなったよ。
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