来夢

ダンサー・イン・ザ・ダークの来夢のレビュー・感想・評価

4.4
ビョーク(xトムヨーク)という罠にかかって多くの人が犠牲になった鬱映画代表作。まだ左程ラースフォントリアーを知らなかった俺もまんまとその罠に掛かりました。結果ツボだったんだけれど。
もちろんビョークの歌/音楽も期待通り、というか期待以上。公開から20年以上たっても未だにサントラ聞いてるよね(20年以上経っているという現実を今知ってショックを受けているが)。
ミュージカルって歌が物語の明部と暗部のコントラストを引き立てるから、その「黒い部分」の多い鬱映画とは実はすごく相性がいい。テレビだって黒がキレイを売りにしてるでしょ。突然歌いだしても馬鹿みたいな笑顔で糞みたいな悩みを歌うようなこともないしね。特にこの映画では突然歌うことの理由もはっきりしているから違和感もないし、歌に逃避するっていう設定はすなわち、無理して明るい妄想をしているという、明るければ明るいほどに現実が辛いという仕掛けになっているので、それは結果として、映画の中の唯一の明るいシーンも明るくないという、常にどん底な体験を強要してくれる。加えてミュージカルシーンとのシームレスな切り替わりが現実と妄想の境目を曖昧にする効果ももたらしているのが見事。まさにこれ以上ない現実逃避の表現。それでも否応なしに訪れる現実にうちのめされる。でもそこにあるのは母の強さ。どうしようもないほどに頑固で融通も利かないし、親として正しいのかと言われると微妙なところだけれど、子への親の愛の強さがこの映画の深い闇をほんのわずかに照らしてくれる。でも、やっぱり強い親でも人間。なラストシーン。つらい。ダンサーもインザダークだけれど、観客もインザダーク。
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