イッソン

暗殺の森のイッソンのネタバレレビュー・内容・結末

暗殺の森(1970年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

イタリアの映画が見たいと思い観た。
しかも名作と言われている。

タイトルからして暗そうな感じだけど、やはり暗い、そしてどこか生々しい。
人の表情や背景が熱を持って迫ってくる。

ラジオ局らしきところで3人娘が歌う。あの変なシーンは始まりとして明るさと暗さが同時にあって、この作品の行く末を暗示してるような気がした。3人娘の髪型で時代が1940年前後とわかる。

若奥さんのステファニア・サンドレッリも猫みたいにしなやかで無邪気な可愛いらしさ。背景の建築もことごとく絵のようだ。
キリコの絵に共通する。
歩く時の靴の音もいい。
革手袋もおしゃれ。

字幕なしで観たから、わからないかと思いきや、何となく話はわかった。イタリア語はたまに日本語に聞こえる。

パリで中華料理、チャーハンを箸で食べるのが可笑しい。ステファニアの箸の持ち方が、日本人から見るといかにも外国の人に見える。
花を買うシーン、花売りの娘がフランス国歌のラ・マルセイエーズを歌う。ファシストからしたら敵対する思想だ。フランスはレジスタンスの活動も強かった。ヒトラーに対しても強い抵抗があったはず。ほんの一瞬のシーンだけど対立する思想と時代を描いている。「カサブランカ」にもそんなシーンありました。

ドミニク・サンダの立ち方がいい。
ちょっと片方の脚に体を乗っけていて上半身は斜めのシーンが忘れがたき一瞬。
窓際にバレエシューズが干してあって、そこのタグをはがすマルチェロ、言葉でなく行為で次のシーンにつなぐ。

ドミニクのバレエ教室、ずいぶんと雑多な感じだ。男の子は宙返りしてる。サーカスの教室も兼ねてる?これもドガの絵みたいな感じです。

暗殺の場面が、ナイフでめった刺しとは、見ていて痛くて痛くて、ピストルで一気に殺してよ!と思う。残酷だ。ドミニクが森の中を叫びながら逃げ殺されるところはオペラのように悲壮だ。雪の残った自動車道が冷たい。

マルチェロは裏切るのが平気なんだな。女にしがみついていても、愛するものも信じるものはない、孤独の深さがにじみ出ていた。それだけ演技もいいってことか。

ファシストの影と孤独の影が重なって、レイヤー乗算されてます。