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イディオッツのmoonのレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
4.0
早稲田のトリアー二本立て。人によっては閲覧注意だし不快でしかないと思うが私は超面白かった

「豊かでも幸せになれない社会をどう評価するか」
知的障害者のふりをして街に繰り出すコミュニティに、カレンという女性が入るところから映画が始まる(多分このカレンは本当に軽度の知的障害設定だと思うが)

愚か者を演じることで社会や家庭の抑圧・責任から逃れられるという単純な目的で始まった共同生活。
でもどこかで障害者が普段公共の場で向けられる好奇の目、自由にコミュニケーションがとれないもどかしさ、自由だが物凄く不自由な感覚を徐々に思い知っていく。
そして彼らの中にもある小さな罪悪感と偏見は"本物"のダウン症の人々を前にした時露わになる。

コミュニティにいた美術教師が教室に戻った瞬間、以前と変わらず話し出したシーンも面白かった。人は体に刷り込まれた経験と、果たすべき責任を前に立ち振る舞いが決まるのかも。

ラスト、カレンが家に戻った時の家族からの冷たい目線が忘れられない。
今なら「当事者に失礼」と叩かれること必至なコミュニティも、心の底から必要とする人は本当にいると思う。本作はドキュメンタリーじゃないが、リアルすぎて驚いた。

自閉症の兄弟を長年近くで見てきた者としてはめちゃくちゃ考えさせられたし面白かった。真に自由な人なんて誰もいない
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