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空中庭園のtakのレビュー・感想・評価

空中庭園(2005年製作の映画)
4.0
 40才を目前に控えた時期に、この映画に出会えたことに感謝。”家族”について改めて考える映画であった。こんなスリリングに家族を描いた映画があっただろうか。家族ある人ならば、この映画の”痛さ”が理解できるはず。周りの人々から思われている自分の家族像と、現実とのギャップを感じている人ならばなおさらだ。

 京橋家は家族では隠し事をしないのがルール。普通の家では話さないような話題も包み隠さず答える。ところが、子供達は学校をサボリがちだし、夫は浮気に忙しい。幸せな家庭像を守ろうとする妻絵里子は暗かった少女時代のことを家族には開かしていなかった。秘密をもたないはずの家庭が、みな秘密を抱えているのだ。そんな折、息子が夫の浮気相手を家庭教師に選んだことから、”幸せな家庭像”が崩れ始める・・・。思いこみが現実を見えなくしてしまっている。息子にそう言われて、自分を振り返る絵里子。母親と絵里子とのギクシャクした関係が物語の最後に向けて修復されていく様子には感動させられる。大楠道代演ずる母親が実に見事。

 原作の物語を映像化するにあたって数々のアイディアが盛り込まれている。特にクライマックス、ベランダで”血の雨”に打たれて泣き叫ぶ絵里子の姿。普通に見れば「キャリー」を思わせる血まみれの場面だけど、「みんな泣きながら生まれてくるんだ。血まみれでね。」という前半の台詞と呼応することで、この場面が異常なほど涙を誘うのだ。これまで”思いこみ”で生きてきた主人公が生まれ変わる場面。家族がほんの少しだけ変わるラストシーンが、何とも言えない余韻を残してくれる。他にも揺れ続けたり、回転したりするカメラは、観ている僕らをとても不安にする。でもそれは”幸せな家庭”というもろい外見でつながれた家族の不安定さをも表現している。

 女優小泉今日子を甘く見ておりました。反省。様々な表情を使い分け繊細な妻の感情を表現している。夫の浮気相手であるソニンも上手だったし、特別出演の永作博美がこの緊張した映画の中で笑いを誘ういい役どころ。ソニンと永作チャンが恋人かぁ・・・羨ましい(こら)。
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