子供は親を選べないというけれど、まさにこの作品はその悲劇を描いたものである。
子供が親をどれほど必要なのかを、わかっていない親もいる…。
息子プリコの視点で語られるため、親が思っている以上に、子供が親の考えや事情を分かっていることも、リアルに伝わってくる。
愛人と密会するときも、堂々と息子をだしに使う母親…。
母親ニーナの身勝手さにもちろん怒りを覚えるが、父親のやるせなさにも胸が苦しくなる。
そしてそのニーナの行動が、純粋なプリコにどんどんと影響を与えていく。
プリコのひたむきな様子と彼の子供らしい愛らしさがまた涙を誘う。
電車の窓に映るものが、今ここの現実から彼の思い出や想像へと移り変わっていく。まるで走馬灯のような演出に、プリコの心情がよく表されているのだろう。
熱を出したときなどに変な夢を見ることがあるが、彼にとってはそれだけではないことは明らかである。
プリコが無表情にも見える強張った表情で、恐る恐る近づき、闘うシーンも苦しい。子供にそこまで背負わせてしまうこと自体に、やはり悲しくなってしまう。
マジックを見に行くニーナとプリコ。
マジックといういわゆるまやかしに、ニーナもかかってしまうことを示すようである。
しかしそれは彼女にとって、半永久的な幸せをもたらすかどうかなんて答えは明らかである。
子供が妙に大人みたいになってしまったり、空気を読み過ぎてしまうのは、そうせざるをえなかったからだろう。
親の事情で振り回される子供が、幸せなことがあるだろうか。
しかし、こういった悲劇の奥に希望を見出せるようなラストで少しほっとした。ただ、ラストシーンのプリコの行動とその背中には涙が止まらなかった。