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裸の島のmimicotのレビュー・感想・評価

裸の島(1960年製作の映画)
4.2
これを観た外国人は、日本人ってもの凄く忍耐力があるな~と、思ったに違いない。世界60ヵ国で絶賛され、沢山の賞を貰ったそうです。

全編通して家族の台詞は一切なく...夫婦は生きることの苦しみに、声を殺して耐えているよう...
終盤に、その静寂の演出の意味がわかるのですが、、凄い。

目を閉じると、水、運ぶ姿、乾燥した土の残像が残ります。そして頭の中で音楽が鳴り響く。。

瀬戸内海に浮かぶ、ごく小さな何もない裸の孤島で暮らす、四人家族の貧しい生活が淡々と映し出される。

水道も通っていない島で農作物を作る夫婦。
苦労して運んだ水を畑の土は一瞬で吸い込みまた乾燥していくというのに...何度も隣の大きな島へ、小舟を漕いで水を汲みに行き、天秤棒に吊るされた桶をかついで畑へヨロヨロと急斜面を行く...

ソファでゴロゴロしながら観てごめんなさいという気持ちになって、キチっと座って鑑賞。笑

「働けど働けど猶わが暮らし楽にならざり..」石川啄木の短歌を思い出す。

労働の後のドラム缶のお湯に浸かる気持ちよさそうな表情がいい。画面の中にビールを一本差し入れたくなりました。

何故、時代から取り残された不便な孤島に住んでるのかはわからない。
楽しいこともあるけど、その分、日常に戻る時はぁぁまたか...と思ってしまう。
辛くても過酷な日々を生き抜くように、どんなことも乗り越える夫婦の人生が強烈に印象に残りました。

新藤兼人監督の奧さんである、妻役の音羽信子さんが亡くなったときに、この裸の島に半分散骨され、100歳まで生きた監督もまた同じ場所に散骨されたそうです。

これは忘れられない映画になりそう。
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