イチロヲ

悪魔の赤ちゃんのイチロヲのレビュー・感想・評価

悪魔の赤ちゃん(1973年製作の映画)
3.0
人間の首筋を噛み切り殺害してしまう、凶暴な赤ん坊を産み落とした夫婦が、魔女狩りにも似た弾劾行為を耐え忍んでいく。混沌を生み出してしまった夫婦の葛藤劇を描いている、サスペンス・ホラー。

凶悪ベイビーの見世物映画ではなく、「突然変異体の赤ん坊が出現したら、どうなってしまうのか?」というテーマを、社会派サスペンスとして描いていく作風。これはラリー・コーエン監督の気質であり、人間社会の混沌を描くことに比重が置かれている。

何よりも、悪魔の赤ちゃんを身籠った原因が明示されないまま、夫婦の日常がグチャグチャにかき乱されていくところが面白い。マスコミの扇動、製薬会社の思惑、警察の捜査網など、非常事態の人間模様がスピーディーに展開される。

しかしながら、夫婦とは無関係となる一般市民の視点が描かれないため、「閉ざされた世界」の話にしか見えないところが残念。また、赤ん坊の姿を映さないホラー演出に一貫しているため、リック・ベイカーの仕事を堪能することもできない。
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