健一

TINA ティナの健一のレビュー・感想・評価

TINA ティナ(1993年製作の映画)
4.7
What's love got to do with it.

本作の原題であり 彼女の最後の言葉として深く受け止めたい。

『ロックンロールの女王』ことティナ・ターナーが2023年5月24日。
天国に旅立ちました。享年83才。
謹んでお悔やみ申し上げます。

劇場公開時鑑賞済。
正直、私はティナ・ターナー全盛期の世代ではなく彼女に特に深い思い入れはないのだが、劇場で本作を見た時はとんでもない衝撃を受けた。
『なんて壮絶な半生‼️よくこれを公表し映画化したな!』と。
普通『伝記映画』といったら当事者の亡くなられた後に作られるものだが、本作が劇場公開されたのは1993年。
30年も前の作品なのだ!😳
絶頂期は過ぎたとはいえ50代半ばでこの作品を世に送り出したのは『今を生きる人達に早く私の体験談を見て欲しい。』ということなのでしょう。
あれから30年が経ち彼女も亡くなった今。
そのメッセージは色褪せるどころか現代にこそ強く人々の心に響くのではないでしょうか。

story
テネシー州の片田舎で母に捨てられ祖母と暮らすアンナ・メイ(ティナ・ターナーの本名)。
祖母の死後 ようやく母と姉と暮らせるようになるが生活は苦しかった。
やがて 旅回りのR&Bバンドに魅了され 彼女はバンドのリーダー アイク と結ばれる。
彼のギターと彼女の歌声は各地で大成功を収め 他のミュージシャンからも支持され国際的にも好評に。
しかし70年代に入って人気は低迷。アイクは酒やドラッグに溺れ ティナを傷つける日々が続くようになる・・・

DV(ドメスティックヴァイオレンス)なんて言葉が無かった時代。
輝ける栄光の裏でこんな壮絶な人生を送っていたなんて初鑑賞時は本当に大きなショックを受けた。
私も9歳の頃、酒に酔った父に殴られて血だらけになった母を見た事がある。
あの頃のトラウマは今でも私の心の中から消えることはない。
あの頃、あの時代。
今では少数になったのかもしれないが、当時は普通に行われていた(と、子供の頃は思ってた)。

でもステージに上がれば全てを忘れられる。
ティナ・ターナーの歌声はパワーを増すいっぽう。

息子たちを守るため、キャリアを守るため、自分自身を守るため。
彼女は決断するが、夫アイクの名字と芸名である『ティナ・ターナー』だけは 私に残して と要求する。
そこに どんな思いがあったのか・・・
自分を傷みつけた夫の名字を別れた後でも名乗りたい だなんて。

目を背けたくなる痛々しいシーンもあるがティナ・ターナーの『栄光と苦悩』を描いた見事な伝記映画として仕上がっている。

そのティナ・ターナーを演じアカデミー主演女優賞にノミネートされたアンジェラ・バセットの圧巻の演技がとにかく素晴らしい。
パワフルな歌声、パワフルなダンス。
そしてボロボロなプライベート生活。
完全にティナ・ターナーに憑依している。
全女性の敵😅アイク・ターナーを演じこれまたアカデミー主演男優賞にノミネートされたローレンス・フィッシュバーンも圧巻の憎まれ役。
ふたりの化学反応が作品を超一級品の映画に仕上げている。


精神を整えるため....彼女は唱える。
『南無妙法蓮華経』と。

さぁ。波乱の人生は終わった。

ゆっくり休んで。 アンナ・メイ。



劇場公開時 1993年 10月
池袋東急
💺300席
客入り ?


オーーーマイガーーー!😭
オーーーマイガーーー!😭😭
オーーーマイガーーー!😭😭😭
オーーーマイガーーー!😭😭😭😭

本作でゴールデングローブ賞の最優秀主演女優賞を受賞したアンジェラ・バセット。
今でこそ大女優だが 30年前の当時は主演作が一本も無いチョイ役ばかりのほぼ無名に近い駆け出しの女優さん。
当然下馬評でも彼女が受賞するなんて誰も思っていなかった。当然 本人も。
授賞式で彼女の名前が呼ばれた瞬間 会場内は騒然。
アンジェラも驚きを隠せない状態だった。
壇上に上がりトロフィーをもらうとアンジェラは大号泣で『オーマイガー』を連発。
会場中が もらい泣き をしていた。😭




アンジェラ・バセット追悼コメント。

『自分の抱えた痛みとトラウマを世界を変えるために使った女性の逝去に対し 何とお別れを告げればよいのでしょう。
彼女は困難な人生を生き抜いた物語をシェアし また自分自身と彼女に憧れる人々のためにロックンロールの道を切り開きました。
こうした事を通じ ティナ・ターナーは恐怖の中に生きる人達に 愛と情熱 自由に満ちた美しい未来を見せてくれました。
彼女の姿を世界にお見せできたことを光栄に思います・・・』
健一

健一