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王と鳥のHKのレビュー・感想・評価

王と鳥(1980年製作の映画)
3.7
尺も80分と手頃でなんとなく鑑賞したフランスのアニメが、実はとんだ大物作品でした。
まず1980年の作品にしては妙にクラシック・テイストだなと違和感。
フルモーション・アニメで動きも滑らか、各キャラも表情豊かでよくできてるぞと。
それにしても全体的に既視感のあるシーンだらけだと思っていたら…

ユニークでシュールな物語の中、東映動画の名作『ホルスの大冒険』や『長靴をはいた猫』、『空飛ぶゆうれい船』を髣髴とさせるシーンや、『未来少年コナン』『カリオストロ』『ナウシカ』『ラピュタ』など宮崎駿作品で見たようなシーンが次から次へ。
そういえば主人公を助ける大きな鳥が『君たちはどう生きるか』の鷺のようにも見え・・・

上記の名作アニメ群の影響を受けたにしてはどうもおかしいと調べたら、やっぱりその逆。
実はなんと、本作はあの噂に聞いた『やぶにらみの暴君』(1952年公開)。
というか正確には『やぶにらみ~』を同じポール・グリモー監督が手直しをして1980年に公開した改訂版だと判明。ディレクターズ・カット版といいましょうか。

『やぶにらみ~』は手塚治虫や宮崎駿らが大いに影響を受けた作品だと聞いたことはありましたが、これほどまでとは。
『王と鳥』という題で改訂版があるなど全く知らず、知ってから続けてもう一回鑑賞。
原作はアンデルセン童話の短編『羊飼いと煙突掃除人』。
脚本のジャック・プレヴェールも聞き覚えがあると思ったら、先日観た『陽は昇る』や『天井桟敷の人々』などの名作の脚本家でシャンソン曲『枯葉』の作詞もしたフランスの詩人。
改訂版の本作のクレジットにも既に当時故人の“ジャック・プレヴェールに捧ぐ”の文字が。

後半に登場する人型巨大ロボットは人が搭乗して操縦するタイプとしては世界初とか。
この動きは幽霊船の“ゴーレム”やナウシカの“巨神兵”やラピュタの“機械兵”などのアニメ作品だけでなく、その登場シーンは「ジャイアント・ロボ」や「メカニコング」「メカゴジラ」など特撮巨大ロボにも影響を与えているのでは。

また『やぶにらみ~』は声優も豪華で仏語版にはアヌーク・エーメやセルジュ・レジアニ、英語版にはピーター・ユスチノフやクレア・ブルームの名前も。
『やぶにらみ~』と本作の違いをいろいろと比較してみたいところですが、現状手軽に観れるのは本作の方だけなので叶わず。
ボタンで床に穴が開く落とし穴(007より先?)や同じ罠に何度もはまる小鳥の繰り返しギャグがお気に入り。
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