櫻イミト

蜘蛛 第一部「黄金の湖」の櫻イミトのレビュー・感想・評価

蜘蛛 第一部「黄金の湖」(1919年製作の映画)
4.0
ラング監督の現存する最古の作品(前2作は行方不明)。秘宝アドベンチャー映画で、主役のキャラから世界観までまさしく元祖インディ・ジョーンズ。

南米の海岸、インカ帝国の宝の地図を瓶に隠した男は射殺され海に転落する・・・冒険家ケイ・フッグはセイリングの途中で瓶を発見し財宝を探しに行くことを決意。しかしチャイナタウンマフィア”蜘蛛団”の女団長リオ・シャは噂を聞きつけ地図を盗み出し南米へ向かう。ケイは気球を使い先回りすると、インカの末裔の神殿の前で大蛇に襲われそうな娘と遭遇。実はその娘はインカ帝国の巫女だった。。。

100年以上前に「インディ・ジョーンズ」(1981~)の原型が作られていたことに驚く。ルーカスとスピルバーグによれば、インディは少年時代に夢中になった連続活劇映画をよみがえらせたとの事。彼らの少年時代は戦後なので、リバイバルを観たか本作の影響を受けた後の映画を観ていたのか定かではないが、いずれにしろ本作が原型プロットと言えるだろう。

映像、演出、ストーリーの完成度が高く、今見てもエンターテイメントとして十分に楽しめた。中でもインカ帝国の美術がアナクロな魅力を放っていて、戦前少年誌の挿絵を実写で観ている感覚だった。

本作でヒロインの巫女を演ずるのはリル・ダゴファー。翌年の「カリガリ博士」(1920)、そして「死滅の谷」(1921)でもヒロインを演じている。

ラング監督は本作の次に「ハラキリ」(1919)を撮り、次いで「カリガリ博士」を撮る予定だったが、本作が大ヒットしたため続編の制作を任命された。しかし短期間で作り上げた「蜘蛛 第2部:ダイヤの船」(1920)はブレークせず、その後の続編制作は中止になった。

■1919年の映画
「アルプス颪」(アメリカ)
「散り行く花」(アメリカ)
「スージーの真心」(アメリカ)
「サタンの書の数ページ」(デンマーク)
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