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アナタハンのIMAOのレビュー・感想・評価

アナタハン(1953年製作の映画)
3.0
第二次世界大戦下。日本軍30名の兵士が南海の孤島アナタハンに辿り着く。そこには先に辿り着いていた男とケイコという女がいた。次第に彼らの中でケイコを奪い合うようになってゆくのだが…
もっとドロドロした話にできただろうが、そこはスタンバーグ。ある程度の品格を感じました。全体的にナレーション進行なのがちょっと好きになれなかったが、ラストシーンは余韻があって好き。日本に帰ってきた男たち。だが、ケイコもそこにいたであろう、というナレーションとともにケイコがずっと先を見つめる姿で佇んでいる。そこに現れるのは、ケイコたちと関わり死んでいった男たちの姿だ。彼らの表情は無表情でカメラに向かって歩いてくる。その時ケイコは何を思うのか?その切なさは巧く表現されていた。
史実に基づいた話だが、その記事などを読むとこのモデルとなった女性の哀しさがひしひしと伝わってくる。現代なら帰国した後、彼女がいかに苦労したのか?などを描くべきかもしれない。

ケイコを演じた根岸明美はどこかで見たことのある俳優だと思ったら、成瀬巳喜男の『驟雨』で原節子夫妻の隣に住む若夫婦の妻役だったことを後で知った。その後も『名もなく貧しく美しく』や『キングコング対ゴジラ』などの名作に出演している。
監督はジョゼフ・フォン・スタンバーグだが、日本映画として製作された作品で、音楽は伊福部昭が担当している。
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