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簪(かんざし)のleylaのレビュー・感想・評価

簪(かんざし)(1941年製作の映画)
3.9
井伏鱒二の小説をもとにした、夏休みの温泉宿のに泊まる人々のユーモラスな人間模様。

小津さんの1年先輩でもある清水宏監督作品。

のどかな光景が微笑ましいけど、実は太平洋戦争の少し前なのだとか。
日本もバカンスを楽しむ時代があったんだと驚きました。

笠智衆が演じる青年が風呂場で足に簪(かんざし)が刺さりケガをする。落とし主の女性(田中絹代)が簪を取りに宿に来るという。
周囲の人々は、簪を取りに来る女性は美人でなければいけないなどと語り合う。ほのぼのする微笑ましいやりとり。

笠智衆と田中絹代の歯痒いぐらいに淡い、幻の恋。

足に刺さった簪を「情緒が足に刺さった」という洒落っ気、2人をくっつけようとする口うるさい作家風の男性、子供たちの元気な声、温泉宿の賑やかさ、切ない夏の終わり。

古き良き日本の夏の光景が描かれる71分。ラストも素敵。
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