ビョルン・アンドレセン演じる美少年タージオに溺れる中年男性を描いた名作。
「ショタコン」「BL」などという陳腐な言葉で表すことはできない、性別を超えた圧倒的美への憧れと、焦燥、そして滅亡。
ルーブル美術館に行ったときを思い出した、古代ギリシャの彫刻を代表例に、普遍的・圧倒的な「美」を目の前にして人はさまざまな感情を掻き立てられるが、なす術はない。
本作の恐ろしいところは、セリフがほとんど登場しないというところ。タージオ本人はただ存在しているだけであり、そこに対話はない。(かなりあざといけど)
登場する主な会話は中年男性の過去の出来事や自責の中に含まれており、もはやこの映画を構成するすべてが妄想幻想と言っても過言ではない。
その一部一部がとてつもなく美しいということが残酷だ。