ニューランド

武器庫のニューランドのレビュー・感想・評価

武器庫(1929年製作の映画)
4.0
☑️『アルセナール(武器庫)』及び『赤い小悪魔』『風の餌食』▶️▶️
フィルムセンターでは、しばらく満杯入場不可が続いた。番組のせいなのか、或いは現在の席数限定ではどの番組でもそうなるのか、と確認にチケットぴあに寄ってみる。やはり番組によるようで、サイレントものはカスカスの予約状況。伴奏のない安い方のチケットを空いてる時間で買う。3本中2本は、観ている作品だったが、安いのでそのまま買うことに。元々観る気で行ったのではなく、席の一般的な埋り状態を調べたかっただけなので、前日からの徹夜等で半ば次の作品の為の睡眠も兼ねてというのもあり、日も経って記憶もあまりないが、一応今年はTVて観た短編も記して置こうと決めたので、記憶をたぐり簡単に。勿論、この3本の中では、ドヴジェンコ作が印象でも傑出している。
『大地』『ミチューリン』『航空都市』等には劣るとしても、紛れもない傑作、且つこの作家の最も厳しく、力強く、ストレートに表現を達成している作品である。我々の世代で代表的長編漫画(劇画?)で中学の図書にも設置してあった(日教組推薦の階級闘争のバイブル)『カムイ伝』の映画化が視覚化されてきた、稀なる作品でもある。70年代には、ルノワール『ラ·マルセイエーズ』タッチで、近年ではゲルマン遺作『神様はつらいよ』のスタイルで映画化作品を夢想したと書いたことがあったが、改めて本作の妥協のない強度は『カムイ伝』のそれと拮抗し、ラスト等は、主人公·正助の最大の盟友、ゴンの最期のようだ。ロシア革命中の労働者らの武器庫死守の不可能性の詩化·シンボル化を越えた現実の力に到達してく本作は、つよく硬質のモノクロコントラストが、機械·生物様々な乗り物の疾走フォロー·駆け抜け·背後光景流れ·カメラ自体の揺らぎが、内的にも極限の緊張度で並べられ、それら相互の運動性·方向の変化が素晴らしく、表情·行動の挟みのアクセントも同質の魅力·高めあいを促す。説明以上に、映像の力が革命の力学とリンクしてゆく。アクションは扇情性を廃し、遺体等の結果だけを中心としておさめ。迫力·スケール·速度感·存在感·光と闇·煙、本物という表現力を突き抜けて在る。
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グルジア映画の初期作も、同じくロシア革命を扱うが(この頃のソ連映画化はだいたいそうだが)、より細かなウィット、スピードあるアクション、の緩急の味が、誰をも惹き付ける。斥候2人に、女子事務員?も加わって、敵情を捕虜等の武勲も思いがけず·あげる一方で、女の子が捕えられて拷問に、傷も負う等、添え物ではなく、分け隔てなく戦う、爽快感と痛み伝わる手応え。今の一球アクション映画と比べてもまったく遜色ない。ラストのトリオの叙勲 ·喝采を含め、『スター·ウォーズ』の親しみと痛快感に繋がってくる。
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クレールといえば、キビキビいきいき、才気煥発、皮肉や批評性、庶民のフランクさと気安い親愛、といったイメージだが、この作は明らかに異質で、しんねりむっつり、禁断的な愛の物語。架空の国のクーデターによる、旧体制派の逮捕·拷問、その程度に差異があることからの、疑惑の生まれ·信頼の喪失。それに凝り固まって精神のバランスを失った貴婦人と、その国に事故で入ってしまった若き·だが後年の姿まんまのC·ヴァネル演じる名パイロットの、塞がった恋。
視覚·速度·緊迫·迫力·充分の空中飛行機描写と、地上高官の対応の格。2人等の深いやり取りのゆったりめ切返しの、カメラワーク·アングル変化と選択眼、の更に本格。この方面·題材でも標準をはっきりクリアしてて、やはりたいした大家と改めて納得。この湿り具合、本格足元からの力感に、ユーモアが加味されて、個人的には、『ル·ミリオン』『自由を我等に』に次ぐ、偉大な作品『奥様は魔女』に引きついで行かれてると、勝手に解してる。
睡眠を予定してる時間帯に半ば睡眠休憩を実行しながら観たので、理解は半ば夢の中の幻によっていると思うが、それでも納得·満足·良質味覚に直結してくのが、かつての名匠たちの世界なのである。
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