ミサホ

どですかでんのミサホのレビュー・感想・評価

どですかでん(1970年製作の映画)
4.0
絵の才能もお持ちの黒澤監督の作品だ。北野武監督を思い出したのだが、やはり、このお二人。感性が似ているのかなぁと思う。

なんとなく朝の連続テレビ小説のような始まりだし、終わり方だった。(“ちりとてちん”とごっちゃになっているわけではないよ)

どですかでん。
電車の擬音。
運転手は六ちゃん。空想の中で生きている。

観終わって振り返ると、人は人、自分は自分と周りに振り回されずに生きるのがいかに大事かということを改めて思ったなぁ。

人がなんと言おうと、自身の見たもの、見るもの、聞いたもの、信じるもの…ってのがすべて。

噂話に興じる女達の嫉妬と羨望。
男の姑息さと後ろ暗い欲望。
善と悪。かと思えば無償の愛もある。

色々な家族の形を描いた作品。
黒澤監督のこれまでの作品とは一線を画す作品なのかなと思う。(ひとつ前に『羅生門』観たからね)

ホームレスの親子のパートは、物悲しい。大きな家を建てるという夢を語る。以前は建築家だったのかな…ってくらい細かい描写が面白い。スコットランド風の応接間とか。そうやって夢を持つことは生きるための大きなエネルギーになる。

また、脚の悪い島さんが同僚3人を家に招くシーンは特に好き。同僚のひとりは、島さんの奥さんが3人をもてなさなかったことに不満を抱くのだけど、その時の島さんが見せた昭和の日本らしからぬ反応というのにはジンと来た。

また、劇中である人が、死んだ人のことを思い出すことは一時的に死んだ人をも生かしている…みたいなことを言っていて、また違う人は死んだら私なんか忘れられてしまうと心配している。

当事者の考えることと第三者の見方。
まあ何せ黒澤監督の視点には興味が尽きない。本作のキー🗝なるのは毒と薬かな…と解釈した。孤独は毒だし、愛は薬なのだ。
ミサホ

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