昼行灯

赤い砂漠の昼行灯のレビュー・感想・評価

赤い砂漠(1964年製作の映画)
3.6
ミケランジェロ・アントニオーニは話に起伏がなくてしんどいから90分以内にしてほしい🥺まあ精神に異常をきたしてる人の話だから論理的な話になるわけがないのだけど…

子供が足を悪くしたと嘘を言ったのは母親と徘徊したくないからだろうな。オッサンの食べかけメロンパンに金払って無我夢中で食べる母親と一緒に歩きたくないよ…

色のない街(ペンキで無彩色に塗り直した?)や霧で隠れてしまう友人たち、工場の蒸気で聞こえなくなる登場人物たちの音声、モニカヴェッティの視線の先のピントをあえて強烈にぼやかすカメラワークといい、様々な演出において共通してるのは、この物語世界の解像度を下げる効果があるということだった。それは自分も分からず、他人も分からずもがき苦しむモニカヴェッティの見えてる世界ということでもあると思う。

海辺の小屋の真っ赤な一室の中で知人と乱痴気騒ぎする際のモニカはいくらか明るい表情をしているけど、やっぱり他人とズレてるから最終的には孤独になる。それと同じくして、真っ赤な一室も壊される。この作品における赤は仮初の幸せのようなものなのかもしれない。立派な工場設備の赤も、夫の成功を表しているけども、物語を追っていくうちに、この工場は街の環境を壊しているから先は長くないだろうことは自明になる。

あと黄色の煙とか、空を埋めるような星の声を聞く装置?とか、画面いっぱいに勢いよく広がる排気ガスなど、彼女の精神の不安定さには、夫の工場経営が引き起こす環境破壊や、彼の利益追求の利己主義が関係してるような気がする。
そんな見てるこっちまで不安になってくるような画面の中で、モニカが子供に話す海の女の子の話だけが自然的な美しさを讃えていた。この女の子はモニカの心の中にいる本来のモニカなのかもしれん
昼行灯

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