しゅん

男の敵のしゅんのレビュー・感想・評価

男の敵(1935年製作の映画)
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タイトルは直訳すると『密告者』。愚者と裏切り者を兼ねる大男・ジポ(ヴィクター・マクラグレン)が気を大きくしてフィッシュアンドチップスを振る舞うあたりとかほんといたたまれなくて家で観てたら絶対途中で止めてたくらいツラいんだけどそのツラみが後半のカタルシスに繋がるのでまぁこれが映画的サスペンスなんだなと頭では分かっているけどツラいものはツラい。でも観終わると「あぁ良かった…」という気持ちに包まれるから癖になる。映画の中毒性が如実に出てる作品。

正義で動いているかに見えたアイルランド民衆組織の息苦しい保身性を後半に示して、倫理感情に揺さぶりをかける脚本。怯えを可視化するかのような霧夜の中のライティング。幻覚を描くためのオーバーラップ。今まで観たフォード映画の中でも良くも悪くも技巧が優っていて、これがアカデミー賞を獲ったのはなんとなくわかると思った。ドイツ表現主義とフィルムノワールを想起したりもする。恋人ケイティの家の階段を登るジポの背中を縦の欄干越しに撮り始めるショットはゾワッとした。やっぱりものは沢山投げてた。なにかを拾ってバーのガラスを割る拾ったとことか。

プロテスタントの嫌らしいとこが出ている映画だなとも思う。
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