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キートンの鍛冶屋のTnTのレビュー・感想・評価

キートンの鍛冶屋(1922年製作の映画)
3.9
 そこまでアクロバットは無いが、ラストにかけてドタバタが増して行く高揚感とあっさりロマンス落ちが最高。ほかの作品に比べて含意が多いかも。 

 字幕が讃える姿と、その後に映し出される映像の間抜けさのギャップは、「雨に唄えば」の冒頭に後に影響を与えたりしてるのだろうか。そんなオープニングは洒落っ気が効いていて面白い。

 鍛冶屋で働くキートン(もちろん仕事はできない)。今作品では圧倒的な破壊者であり、キートンという機械の暴走である笑。

 磁石の看板が銃や保安官バッジを奪う。金属製品を奪われると、たちまち腕力にはかなわなくなる皮肉。そして金属製品が返還されると再び立場逆転になるのは、実に文明を鋭く見抜いた描写だ。

 馬に蹄鉄のサイズを聞く馬耳東風シーンもおかしい。日本以外でも馬と人間の非応答って認識されているのか。これが犬とかじゃなく馬であることの必然性、ありそう。また、馬以外に車の修理をしているというこの鍛冶屋には、まさに文明の転換点が伺える。馬にサスペンションつけたりするのも、そうしたアンビバレンツが体現されている。

 顔の反面反面で色違うってネタ、「キートンの隣同士」から引き継がれたネタである。映画の限定された視点を手玉に取った笑い。またラストでハネムーン行きの列車が橋から落下、からの次のシーンでの種明かしも、フレーミングを巧みに使ったネタである。ただアクロバットではない笑いを今作品はふんだんにとりいれようとした意欲作だと思う。ラストカットも洒落てる。
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