半兵衛

ヒロシマモナムール/二十四時間の情事の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.0
戦後から十年たち復興してきた広島で交わされるフランス人女優と日本人との刹那の情事が、原爆をめぐる価値観の相違によりいつしか彼らの過去のイメージがフラッシュアップされ、やがてそれが愛の不毛から個人を超越した戦争の傷痕と不条理を浮かび上がらせるアラン・レネ監督の卓越した演出に唸らされる一本。そしてそれが真に迫っているのは生涯戦争体験を語ることがなかった脚本を担当したマルグリット・デュラスの心情(一時期強制収容所にいたらしい、そしてそこで広島に原爆が投下されたことを知りショックを受けたとか)が随所でヒロインを通して語られているように思えるからか。

懐かしい映像でよく見るような光景なのに、どこか異界のような世界観に仕立てた映像も作風に合っていた。「『オルフェ』のイメージで」という注文だけでこうした雰囲気を作ってしまう大映スタッフの仕事ぶりも◎。

それにしても途中インサートされる『ひろしま』の原爆投下の広島を再現した映像はやはりショッキングで、『オッペンハイマー』でノーランが広島や長崎の原爆被害を直接描かなかったのはやはり本作を見て「これは再現できない」と感じたからかも。
半兵衛

半兵衛