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処女オリヴィアのニューランドのレビュー・感想・評価

処女オリヴィア(1950年製作の映画)
2.9
☑️『(処女)オリヴィア』(2.9p)及び『パリ1900年』(3.0p)『二重の愛』(3.3p)▶️▶️
フランスの女流映画監督史とでもいったものが、場所を変えて3月~4月とかなり大々的に行われる。自分の過去の知識と勘だけでチラシの紹介文を読むこともなかったが、それで、林由美香を素通りしようとしたばかりだし、殆ど知らない作品ばかりなので、今回はある程度予備知識を入れる。シネマテークや日仏学院肝いりの名画ばかりの筈だが、特に旧い、モノクロ·スタンダードサイズとか、染色サイレントなんてのはキツく観る我慢が出来なくなった年齢になってしまったようだ(嘗ては、伴奏なしサイレントに映画のエッセンスを認めて食い入るように観入ってたのに、伴奏ついてても眠くなる時が。実際周囲でより高齢者の寝息·寝言がかましい)。特に半世紀から一世紀前の間の、今も華麗に映画美·質評価の中心近くあって当然という名画クラスの狙ったのがどうも··· の感(エプスタインの場合は、中身より保存画質への不満だが)。
『~オリヴィア』は、観る前に少しはとチラシを読むとフランス版『制服の処女』の女子寄宿学校の抑圧と孤高を予想させたが、生活の全てを映画を観る事に費やし、私の数倍の本数をカバー、クールで結構辛口でもある人が、「今回は面白いのがあるよ」と前回’90年代日本映画特集とまるでノリが違う、特に本作は「特にこれは素晴らしいよ。皆レズビアンなんだ」と真面目が珍しく下世話に興奮してた。レズはともかく、作品の清新さ·自由な力を嗅ぎとったにちがいない。
只個人的には、かなり失望し、途中から興味を失った。戦前と戦後、そして独仏の違いなのか、勝手時間割·一斉か自由の食事場とその光景·各部屋の様子と出入り自在·教師と生徒の差の少·外出オープン·誰に対しても抑えない言動·それでも抑えられない自己の内の情動~恋情や人恋しさ、と息抜き·息吹き·煩悶が自由に自然に大小渦を巻いてて、心地も屈折·変節もいいが、人格者を標榜も押し付けがましいメイン教師(=兼創設係わり)や自己葛藤の内省美あるべき生徒ら、その他個性やアッピール上手の人物らも、自分の隠された価値披露が不充分で変に拗ねたり·ヒステリック·直接行動·あっさり引け際決め、等深まりに至らない(姿見えない次期主催者の存在はあるが。また、映画世界の特殊·また普遍性への批評力が確立していない)。美術·野外自然、構図·カメラワーク、らはなかなかに充実·かつ伸びやかも、重ね方は神経の細やかさなく、結果平板に。只、オープンなメイン教師の創設同志にして閉じ籠りキャラで死に至る対照的ライバル教師を演ったS·シモンに巡り合えるとは。キャリアの終わりの方だろうが、往年の輝き·存在感は残ってて突出していた。
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マルケルやバザンが激賞したという、お宝の筈の 『パリ1900年』も惹かれたは序盤に留まった。1900年から第一次世界大戦勃発までの10数年間のパリを中心とした、ヨーロッパの風俗·光景·関心の向きを、記録映像やフィクション映画、スチル写真等の相当数を集め·編集·色々関連·流れ付けての、巧みでシャープな作だが、1900年当時の通り·街並み·交通·出店·人々の限りない様々な顔·ニュアンスに留めてればいいのに、E塔認知と万博·女性中心にファッションと職業拡張·ライフスタイル·演劇の女優らの盛衰の華やかさ·技師や画家ら著名人の活動·来る大戦に向けての不穏な軍備整備と、取り留めなく流し呑み込まんとして来て、トリック込みの劇映画迄有効利用してくると、巧みさ·滑らかさだけではなく線引きが欲しくだらしなさも感じてくる。とはいえ、この中で過去何回も視て、頭に焼き付いてたのは、オーギュストとジャンのルノワール父子の創作風景くらいなので、貴重な体験ではあった気がするし、近年この様々な映像素材を自由に編むスタイルは定番化したけれど、使用許可を取るのに権利絡みで硬くなってる今と比べ、自在に脱線も自由なパイオニアだ。
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エプスタイン『二重の愛』は、例によって、屋内の端正にして壮麗·清潔な構図·美術·スケール、押し寄せる波などの自然や灯点在らの夜景のシャープさと力の壮観、寄り·表情の近接切返しに時に鋭い俯瞰も組み込んでのしっかりと凝視める力を休めないカット·カッティング、悩む姿と心象としての自然の効果的にして大胆な交錯の力感·迫力、シーン転換にアイリス+O·LかDIS+FOからFIを三重·各々の長短コントロールのマジカルな美、心の内のイメージ·インパクトに三~四重にも至る合成と微かOL加え、感傷的·耽美直前のメロドラマに堕ちきらぬ矜持(恋人とそれとの間の息子、二代に亘る博打癖·その巨額負債事件化の引き受け·米国送り出しを、各々の父と=2回目は当然嘗ての恋人で·その叶わなかった夢の成就の形も取り、苦くも深い愛で著わしてく、名歌手)、といった世界だが、何故か妙にエッジや内部も妙にカスカスで画質が悪く(もっといいのがあった筈)、先の二本に比べ長尺だったが、同じ1時間半辺りで残り観ずに、会場を出てきてしまった。
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