ミサホ

生きものの記録のミサホのレビュー・感想・評価

生きものの記録(1955年製作の映画)
3.9
原爆や水爆を恐れるあまり暴走し、全財産💴をつぎ込んでブラジル🇧🇷移住を言い出す三船敏郎演じる主人公の喜一。

そんな喜一の提案を一蹴し、家庭裁判所に訴え出る妻や息子たち家族。父はおかしくなっちゃって物事を正しく判断出来ないから、好き勝手に散財出来ないという判決⚖️を出してくれというわけだ。

そんな家族の諍いと、ひとりの男の信念、その果てに待つ悲劇を描く。

喜一には妾が数人いて、子供もいる。その時代にそんな豪快な人物がいたのだなぁ…。(あ…実話じゃないけど)しかも、きっちり彼らのことも面倒見てる。息子のひとりは毎月お小遣い貰って、部屋を飾り、レコードなんか聴いて、まあまあの暮らしをしてる。

喜一はそんな妾とその子たちも含めてみ〜んなでブラジルに行こう!というのだ。ブラジルに日本🇯🇵に帰りたいという人がいるから、その人とそっくり家財道具やらを物々交換するのだという。

いやいや…騙されてないか?とついつい要らぬ心配したよね。(ちょっと今、詐欺師を題材にした韓国ドラマを観ているもので)

それでも喜一が、水爆とか原爆に対して、なんてものを作りやがったんだ!叫ぶシーンなんかは、ほんとにそう思う。あ…意図したわけじゃないけれど、また今年も原爆の日が近づいてきた。

喜一が経営している工場の従業員たちとのバーベキュー(だっけ?)の写真がとても良かった。躍動感があって、みんなほんとに楽しそう。

でも妻はその写真を見て「その時はあまりに楽し過ぎて、次は悲しいことが起こるんじゃないかと不安になった」と呟く。その悲しいこと…それが突如降って沸いたこの騒動なのだ。

家族を巻き込んだこの騒動は果たしてどのような決着を見せるのか。

その決着の仕方が少し意外で驚いた。

黒澤監督の作品には、土砂降りの雨の描写は多いが、本作は特に多かったように思う。照りつける太陽との対比。そして、ラストのスロープのシーン…昇る者と降りる者の対比。

振り返ると、いろんな対比に溢れた作品だったかも。忘れた頃にもう一度観返したい。
ミサホ

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