松井の天井直撃ホームラン

ちゃんと伝えるの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

ちゃんと伝える(2009年製作の映画)
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↓のレビューは。今はもうなくなっってしまった映画レビューサイトに、鑑賞直後に投稿したレビューを。こちらのサイトに移行する際に、以前のアカウントにて投稿したレビューになります。

☆☆☆★★★

知り合いに起きた“ある出来事”を題材にして、極めてエンターテイメントに徹して走りきった前作の『愛のむきだし』から一転。今度は“ある人物”に捧げられた、園子温監督のプライベートフィルムに近い作品と言えるでしょうか。

その作りは、『愛のむきだし』とは真逆なシンプルな作り。
普通に撮影すると40〜50分程度で終わってしまうかも知れない話を、主人公の感情の揺れ動きを中心としてじっくりと描く事で、観客の1人1人が「もし自分が同じ立場になったら…」と考えさせられて目が離せなくなって来る。

だからあの“むちゃくちゃな”行動さえ、その気持ちが分かる。但し冷静に考えて見れば、映画だから許される事なのだか…それでも、観ている間は目頭が熱くなって来る。

主人公役のAKIRAは『山形スクリーム』の時は演技があれ…だったが、この作品では一転して悩める青年役を好演している。
そして、恋人役の伊藤歩がとても美しい。大袈裟に例えると、神々が宿った様な雰囲気すら感じられ、映画に於ける奇跡的な表情を浮かべるショットが時折見られる。
釣り好きで故人にボソボソと語りかけるでんでんや、如何にもこんな葬儀屋さんいるよな〜と思わせる佐藤二朗も面白かった。

父親はその思いを心に残したまま○の脱け殻に“死の無常”を感じていたのだろうか。
そんな主人公の目の前にもあるものが飛び込んで来る。

“ちゃんと伝える”

愛する人の為にも、今伝えなければならない事があるのだ!

全編で流れるシンプルなギターの調べがまたとても良かった。

(2009年8月30日シネカノン有楽町1丁目)