回想シーンでご飯3杯いける

伝説巨神イデオン 接触篇の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

伝説巨神イデオン 接触篇(1982年製作の映画)
3.4
「伝説巨神イデオン」は、「機動戦士ガンダム」で有名な富野由悠季が監督を務めたTV向けアニメ作品。これはその総集編といえる映画版の前篇。地球人類が外宇宙への移民を開始して50年が経過した時代を舞台にしており、それまで全く別の星に住んでいた2つの種族の遭遇、誤解、衝突を、複雑な精神世界とバイオレンスに満ちた表現で描いている。

「イデオン」はロボット・アニメの体裁をとっているものの、根本的にはコミュニケーションの物語である。第一話で異星人と出会う際に翻訳機が登場する。それまでのアニメやSF映画では、出会ったことが無いはずの無い異星人同士がいきなり会話を始める事が多かったが、その段階で共通の言語が存在するはずなど無いのである。翻訳機で簡単に翻訳できるというのも、厳密にはおかしな話なのだが、ここでワンクッションを設けたのは、「イデオン」における大きなポイントだと思う。

翻訳機を使わなければろくに会話が出来ない異星人同士は、各々が持つ文化、価値観、そして見知らぬ者への恐怖心から、戦闘状態に突入する。自分と他者のコミュニケーションは「エヴァンゲリオン」においても大きなテーマになっていた。「エヴァンゲリオン」では、ATフィールドというバリアの一種を導入し、それを比喩として、コミュニケーションにおける恐怖心、葛藤を描いた。

「イデオン」のもうひとつの大きなテーマが、無限力"イデ"の存在である。主役機であるイデオンは、地球人が開発したのではなく、移民先になる予定だった星の遺跡から発掘された設定になっている。故に、主人公達もイデオンの仕組みが良く分かっていない。そこに、得体の知れない無限力"イデ"が関与している事が徐々に判明してきて、その力が良き力にも悪しき力にもなりうると言う不安の中で翻弄されていく姿が描かれている。これもエヴァ・シリーズの未知の能力に翻弄される「エヴァンゲリオン」の描写と酷似している。