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ブロンドの殺人者のBaadのレビュー・感想・評価

ブロンドの殺人者(1943年製作の映画)
4.0
一番好きなフィルム・ノワール、ただし、フランス映画の『霧の波止場』を除いてです。

チャンドラーの『さらば愛しき女よ』を映画化した作品。

そもそも、ハードボイルド小説を読むという趣味は持ち合わせていないので、(というよりチャンドラーは読むと眠くなってしまうので)原作は読んでいないのですが、70年代に原題通りのタイトルで映画化された物より遥かに見応えがあります。

なんといいますか、フィルムノワールには珍しく、登場人物にハートがあるんですよね。マーロウにも、ヴェルマにもモーロイにもアンにも、全ての登場人物に血が通っています。ラブストーリーと誤解されることを避けるためにタイトルを変えたということですが、うっすらとラブストーリーめいたサブストーリーもあります。

味わいとしては、三人娘が出ていた頃の角川映画の推理もの(松田優作や古尾谷雅人が準主役で出ていたような作品)の骨格をもっとしゃんとさせて、スター級の名女優に悪役を演じさせた感じ、といったらぴったり来るんじゃないかと思います。三人娘が演じる役は、重要だけれどあくまで脇役に止まっているという感じ。

ドミトリクの映画はこれと『荒野を歩け』しか見たことがありませんが、意外にも女優への演出が上手いような印象を受けました。

この映画のクレア・トレヴァーも『荒野を歩け』のバーバラ・スタンウィックも、悪女役ながら、とても魅力的でした。

(2010/11/22 記)
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